シリーズ連載天ぷら研鑽会

2023.10.10

マルホン天ぷら研鑽会 太白胡麻油・特別篇1:天ぷらとフレンチのプロが「太白胡麻油 vs.綿実油」を語り尽くす


今号の「進化する太白胡麻油」特集に合わせ、マルホン天ぷら研鑽会も太白胡麻油にクローズアップし、二本の対談を組みました。ひとつめは天ぷらとフランス料理の異色の組み合わせで、清壽の清水良晃さんとCHIUnE(チウネ)の古田諭史さんが太白胡麻油と綿実油で揚げた天ぷらを比較します。もうひとつは、天ぷら浅沼の浅沼努武さんとてんぷら前平の前平智一さんが、太白胡麻油100%と焙煎の太香胡麻油 淡をブレンドした揚げ油のそれぞれのよさを語りました。

揚げ手:清水良晃(清壽) 
食べ手:古田諭史(CHIUnE)

太白胡麻油のうまみの羽衣。豊かさが素材を包んでくれる[古田]

清水実は私は修業時代にお金がない時、綿実油で天ぷらを揚げる練習をしてました。この店を開いてからは太白胡麻油一本ですから、今日は15年以上ぶりですね。先にいってしまいますが、太白胡麻油と綿実油では、同じ天ぷらとは思えないほど違いますので。
古田僕は清壽さんにはプライベートで通わせてもらっていますが、自分が大好きな清水さんの天ぷらと、綿実油で揚げた天ぷらにどのような差があるのか、それを知ることがとても楽しみです。
清水油の違いがわかりやすい素材を選びました。海老、アオリイカ、新レンコンの順に、まず太白胡麻油、次に綿実油で揚げて比べましょう。ちなみに油だけで試飲すると、たとえ天ぷら職人でも正直、油の特徴はつかみどころがない。天ぷらとして揚げて、塩と一緒に食べると、油の輪郭が一気にでてきます。では順々に揚げます。
古田太白胡麻油で揚げた海老、イカ、レンコンともに甘みがあるというか、うまみのある薄い羽衣をまとっているようです。素材のうまいところを、油の豊かさで包んでくれるというか。一体感と余韻の長さが生まれるのをすごく感じました。
清水太白胡麻油は素材プラスアルファになる調味料ですね。次は綿実油で揚げます。
太白胡麻油、綿実油をそれぞれ100%で揚げて比較。素材は車海老(サイズや形状をそろえるため養殖を使用。35〜40g)、アオリイカ、新レンコンの3種。
古田鍋から上がってくる油のにおいはけっこう強いですね。いわゆる油物のにおい。海老はもともと甘みが強いので差がわかりにくい気がしますが、でも明らかに太白胡麻油とは違う。綿実油で揚げると、こんなにあっさりしちゃうのかと感じました。
清水そうなんです。油の力でこれだけ違いがでます。比べると、こんなに味がしなくなるのかと思いませんか。私が太白胡麻油を使う一番の理由は「味つけ」。たとえばレンコンは太白胡麻油が甘みを最大限引きだし、アクを包み込んでうまみに導いてくれます。こういうのは綿実油にはない。
古田イカもわかりやすいですね。甘みやうまみの余韻の出方が、綿実油では半分以下になりますね。太白胡麻油で揚げたイカは余韻がずっと口の中に残っていたのに。

イカの天ぷらをみると、衣の硬さなどの質感や、色合いには違いはない。味には明らかな差があり、太白胡麻油で揚げたイカは甘みが増して、繊細な味わいなのに、うまみの余韻は長い。一方、綿実油で揚げたものはイカの繊細さが抜け落ち、雑味がでるような印象を受けた。

清水その甘さというか、うまみというかが、油の味ですよ。竹本専務(竹本油脂(株)/竹本信二郎)にも召しあがっていただきましたが、いかがですか?
竹本手前味噌になりますけど、太白胡麻油で揚げたほうがやっぱりおいしいですよね。あぁ天ぷら食べてるな、海老うまいな、衣もうまいなってなる。衣にうまみがのっているんです。でも、綿実油で揚げたものは、単なる揚げ物という感じ。素材の味はよくわかるけど、なぜか天ぷらという感じがしない。天種によっては、そちらがうまい場合もあるかもしれないけど。
古田今の専務のコメントで思ったのは、お寿司みたいだなと。ネタがよくても、寿司として完成されているか否かってありますよね。素材に対して、油の味わいというプラス要素を感じて、天ぷらとしての完成に近づけるのは太白胡麻油なのかと。綿実油は比較すると、物足りなさを感じるというか、素材や衣の一体感がないというか、料理の完成には至っていない、そう思いました。
竹本殺風景な天ぷらというか。揚がってはいるけれど、それ以上の味はでてこない。

太白胡麻油は、淡麗旨口。油切れがよくて軽く、うまみがある[清水]

清水太白胡麻油は淡麗旨口、綿実油はストレートですね。淡麗は軽さと油切れのよさ、旨口は甘みに通じるうまみ。とくにイカやレンコンのように繊細な素材は太白胡麻油で味つけしているようなもの。お客様も「素材がいいね」とほめてくださいますが、実はいいのは油なんですよ(笑)。修業時代も、この店を開業する前も、かなり長いスパンで複数の油を試して、竹本油脂の太白胡麻油に勝る油はないという結論に至りました。15年以上、油の味にブレもなくコンディションがいい。天ぷらは素材と油、衣だけで表現する料理ですから、職人にとってありがたいです。
古田僕はフレンチですが、使っている油脂は、太白胡麻油とオリーブオイルだけ。オリーブオイルは仕上げの香りづけ用で、調理にはすべて太白胡麻油を使います。今日の比較を体験できて、自分が太白胡麻油を使うのは間違ってないとわかりました。素材と一体になる、包容力のあるうまみとやさしい香りが、やっぱりいいです。
今回の比較では、太白胡麻油と綿実油の大きな差を認識。太白胡麻油のうまみは素材の味を引っ張りだし、余韻が長くなることが明らかだった。

清水良晃の天ぷら

潔く、江戸前の流儀を守り継ぐ

揚げ油/太白胡麻油
/薄力粉は常温、水、全卵ともに冷蔵庫で冷やす。生粉はまめにふるい、卵水に加える時もふるい入れ、ボウルの中で濃度差がでるように粉箸で混ぜ、素材によって衣をつける位置を使い分ける。「生粉をつけた素材をくぐらせた時に、衣が完成するイメージ」

清水良晃
1974年、神奈川生まれ。名店として知られた東京・赤坂「楽亭」で故石倉楫士氏に師事し、10年修業。2008年に「清壽」を独立開業。

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清壽

所在地:東京都中央区築地3-16-9 アーバンメイツビルB1F
電話:03-3546-2622

古田諭史
1984年、岐阜生まれ。父は銀座「Furuta」の古田等氏。2009年に岐阜市内に「Satoshi.F 」を開業、2016年「CHIUnE」として東京・東銀座に移転、2021年に広尾に移転。現在、移転準備中。

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CHIUnE

2024年3月に東京千代田区で移転開業予定

(2023年秋の号掲載)
 ※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。