特集魚食の口福

2022.12.27

おいしく食べて昆布を受け継ぐ。京都「瓢亭」の髙橋さんが教えてくれた、切り昆布と昆布〆の料理


昆布でこの一品

昆布を守るために、大切に、おいしく食べたい。そんな想いを込めて、家庭で昆布を手軽に活用できる切り昆布と昆布〆の料理を瓢亭の髙橋義弘さんがおしえてくれました。

瓢亭で日頃使う昆布は、天然の利尻昆布。「道南の天然の真昆布が収穫を見込めないほど危機的な環境だと聞きましたが、利尻昆布を生産する道北もいつか同じ状況になるかもしれません。昆布をこれまで以上に大切に使いたい、守りたいという想いが強くなりました」と髙橋さん。

切り昆布」を常備して、いつでも野菜感覚で少しずつ

昆布はキッチンバサミで幅3mmくらいにカットし、常備しておくのがおすすめ。乾燥した状態で切ると割れやすいので、お酒を少量まぶしてしばらくおいて柔らかくするといい。思いついたときに少しずつ使うと、料理にうまみや食感を添えられます。

切り昆布とスルメの松前漬け風

切り昆布を使う代表的な一品といえば松前漬け。お正月を祝う一品としても欠かせません。太香胡麻油をかくし味に加えると、思わず箸が止まらなくなる酒の肴に。

RECIPE

切り昆布とスルメの松前漬け風

材料/4人分

スルメ(胴)…30g 酒…100ml 大根…200g 塩…5g 柿…100g みりん…30ml 濃口醤油…15ml 酢…30ml 切り昆布…10g 太香胡麻油…15ml

  1. スルメに酒をまぶし、柔らかくなったら幅3mmに細切りする。
  2. 大根は長さ5cm、5mm角の細切りにする。塩をまぶして5分ほどおいてから、塩を洗い流し、しっかり水気を絞る。
  3. 柿は大根と同じく切る。
  4. 1の酒にみりん、濃口醤油、酢を加えて火にかけ、沸騰させる。冷ます。
  5. 切り昆布、1、2、3、4を混ぜてひと晩おく。
  6. 5に太香胡麻油を加えて混ぜる。

切り昆布と煎り大豆のごはん

昆布のダシを大切に使う、日本の精進料理のルーツをみるような逸品。じわじわとあふれてくる昆布のうまみと煎り大豆の香ばしさは、これぞ滋味のおいしさ。

RECIPE

切り昆布と煎り大豆のごはん

材料/4人分

大豆…50g 水…250ml 米…2合(洗って20分以上おく) 切り昆布…2g 太白胡麻油…5ml

  1. フライパンを中火にかけて温め、大豆を転がしながら香ばしく煎る。
  2. 1のあら熱がとれたら、水250mlに浸け、ひと晩おく。
  3. 2を大豆と水に分け、水を足して430ml(米の2割増し)にする。
  4. 土鍋や炊飯器に米、3の大豆と水、切り昆布、太白胡麻油を入れて炊く。

    ◎昆布は昆布〆に使ったものを利用してもいい。

切り昆布と干し貝柱と大根の煮物 ごま味噌がけ

切り昆布と干し貝柱でひと晩かけてうまみたっぷりのダシをとり、大根をみずみずしく炊きました。もどした昆布と貝柱も具のひとつで、噛みしめるほどに味わいが増します。コクのあるごま味噌をかけていただきます。

RECIPE

切り昆布と干し貝柱と大根の煮物 ごま味噌がけ

材料/4人分

切り昆布…5g 干し貝柱…20g 水…1l 大根(皮をむく)…400g 淡口醤油…15ml 濃口醤油…5ml みりん…15ml 塩…少々 ごま味噌(つくりやすい量)[玉味噌(→下記)…80g コクと香りのねりごま…白20g]
※玉味噌は白味噌300g、全卵1個、卵黄1個分、酒50ml、みりん25ml、砂糖20gを混ぜ合わせて中火にかけ、焦げないように混ぜながら5分炊く。

  1. 切り昆布と干し貝柱を水に浸けて一晩おく。
  2. 大根は厚さ2cmのいちょう切りにする。
  3. 1の干し貝柱を細かくほぐし、もどし汁、切り昆布、大根と一緒に鍋に入れる。火にかけ、沸騰してきたら中火にして炊く。大根に火が通ったら、淡口醤油、濃口醤油、みりん、塩を加えてさらに5分ほど炊く。
  4. 玉味噌とコクと香りのねりごま 白を混ぜ合わせてごま味噌をつくる。
  5. 盛りつけ、ごま味噌をかける。

「昆布〆」は和食の偉大な調理法

昆布で魚を包んでおくだけ。昆布を最大限に活用するのが昆布〆です。魚の水分を昆布が吸い、同時に昆布のうまみが魚に移ります。魚の身はぷりんと締まって吸いつくようにしっとりとし、繊細なのにうまみたっぷりに。鯛やヒラメがおすすめです。

RECIPE

鯛の昆布〆

材料/つくりやすい量

鯛(上身)…200g 塩…少々 昆布…12cm×30cm程度 酒…大さじ2 淡口醤油…少々

  1. 鯛は皮を引き、軽く塩をまぶして30分ほどおく。
  2. 昆布は表面をサッと洗ってしんなりさせる。
  3. 酒と淡口醤油を合わせ、1にまぶす。
  4. バットにラップを引く。2の昆布を敷き、3の鯛を並べて包む。さらにラップでしっかりと包み、500g程度の重石をして冷蔵庫で2~5時間ほどおく。

お造りに

昆布〆した鯛をお造りでいただきます。柑橘類でつくった割りダシでさっぱり、白ごまのあしらいでほんのり香ばしく。

RECIPE

鯛の昆布〆のお造り

材料/つくりやすい量

鯛の昆布〆(→上記)…200g 割りダシ(つくりやすい量)[一番ダシ…100ml 淡口醤油…20~30ml 濃口醤油…10ml 柚子、スダチやカボスなどの柑橘類…各適量]ゆがいた菊花、芽ジソ、ワサビ、いり胡麻 白…各適量

  1. 割りダシをつくる。一番ダシと淡口醤油、濃口醤油を混ぜる。柚子の皮をすりおろして加え、柚子とほかの柑橘類を絞る。茶こしで漉す。
  2. 鯛の昆布〆を昆布から取りだし、厚さ5mmくらいのへぎ切りにする。
  3. 鯛を盛りつけ、菊花、芽ジソ、ワサビをあしらい、いり胡麻 白をふる。器の縁から割りダシを注ぐ。

    ◎割りダシの柑橘類は、3種類以上入れると酸味に奥行きがでます。

鯛の昆布〆とおぼろ昆布でお椀に

昆布〆した鯛はさっと焼いて具に。昆布も無駄なく使い、5分ほど煮だしてダシをとります。さらに具として入れるおぼろ昆布がダシの味も補います。昆布尽くしのお吸い物を。

RECIPE

鯛の昆布〆とおぼろ昆布のお吸い物

材料/4人分

鯛の昆布〆(→上記)…4切れ(各40g) レンコン…厚さ2cm ダシ[水…500ml 酒…50ml 昆布〆の昆布…半分程度 塩…少々 淡口醤油…小さじ2] 太白胡麻油…適量 セリ…適量 おぼろ昆布…適量 柚子の皮…適量

  1. 鯛の昆布〆を昆布から取りだし、40g大に切る。
  2. レンコンは厚さ1cmの半月切りにし、ゆがく。
  3. 鍋にダシの水、酒、昆布〆に使った昆布を入れて中火にかけ、沸騰したらアクを取りながら5分ほど煮だす。昆布を取りだし、塩、淡口醤油で味をつける。
  4. フライパンを温めて太白胡麻油を引き、1の鯛を両面に軽く焼き色がつく程度に焼く。
  5. お椀に2のレンコン、4の鯛、長さ3cmに切ったセリ、おぼろ昆布、柚子の皮を盛り、3のダシを熱々で注ぐ。

    ◎おぼろ昆布をダシがわりにたっぷり使うと、いい味がでます。

(2022年冬の号掲載) 
※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。