特集食べる幸せ、どこまでも

2021.12.16

フルーツ王国うきは市。未利用果実の廃棄を防ぐ、辻口博啓シェフも注目する採れたての新戦略が話題


「うきはフルーツ王国」大作戦

福岡市内から車で50分ほど、大分県との県境に位置する「うきは市」。そこは気候風土に恵まれ、一年365日フルーツが収穫できる「フルーツ王国」です。秋真っ只中のシーズン、今まさにブドウや柿、梨、イチジクが収穫を迎えていますが、豊かな実りの反面、「未利用果実の廃棄」という問題も。日本のフルーツを無駄にしないために、『ごま油の四季』編集部ができることを考えました。

※糖度はブリックス値です。
※参考文献/「福岡の柿本」福岡食育健康都市づくり地域協議会

うきは市の情報発信ステーション「ウキハコ」の壁には、こんなステキな愛情あふれる柿の木のペインティングが。

【MISSION1:知る】「未利用果実」の現実を理解する

「うきは市長」髙木典雄×「モンサンクレール」辻口博啓

収穫されても市場に出回らず、廃棄されるフルーツ。「もったいない」現象をくいとめるために、私たちは何ができるのか。モンサンクレールの辻口博啓シェフがうきは市を訪問し、フルーツの未来を考えました。

髙木ようこそ、「うきはフルーツ王国」へお越しくださいました。
辻口失礼ながら…僕はうきは市という地名と場所を、今回はじめて知りました。フルーツが豊富にとれるのだとうかがい、パティシエとしては今日の訪問に心惹かれました。
髙木一年365日、フルーツが収穫できる全国でも稀な土地がらです。しかもフルーツそれぞれの品種が多いのが特徴です。市場に出回っているもので、ブドウは50品種柿は16品種梨も16品種あります。
辻口すごい数ですね。ブドウってそんなに品種があるんですか。
髙木なんでこんなにうきは市ではフルーツがとれ、品種も多いのかと。4年かけて科学的根拠を調べたところ、地形・地理、気温、土壌、風、水、雨量という条件がそろって良く、フランスのボルドーに似ている自然条件だとわかりました。この調査の後、私たちは「うきはテロワール」と名づけました。
辻口いいネーミングですね。大地の恵みを大切にし、おいしいフルーツをつくりたいという想いが伝わってきます。
髙木そうなのです。農家さんたちは日々おいしいフルーツをつくろうと努力されています。でも、実は大きな課題があるのです。
辻口それは未利用果実の廃棄ですね。漠然とは知っていましたが、それほど大量なのですか?
髙木残念なことですが、たとえば柿は実際のところ4割ほどが未利用のまま廃棄されているのが現実です。ブドウや桃も廃棄量が多いです。ちょっとした形やキズ、虫食いなどで規格外となり、取引から外されてしまうのです。
辻口そんなに多いんですか! 規格外品は捨てられる運命しかないんですか?
髙木このフードロスの課題解決は急務です。昨年、市内に6次加工センターを開設し、農家さんたちが未利用果実を活用できる場をつくりました。一番の狙いは、ここで収穫期にとれたフルーツを1・5次産業化することです。つまり生のフルーツの状態ではなく、農家がピューレなどに加工して冷凍すれば、保管も配送も可能になります。
辻口国産フルーツの冷凍ピューレは、なかなか手にできない食材です。全国のパティスリーも興味を持つと思いますよ。今日このあとのフルーツロールケーキのデモンストレーションでも、ブドウやイチジクなどのピューレを活用できます。
髙木フルーツを生かしたロールケーキということで、とても楽しみです。うきは市内はスイーツのお店も多いので、みなさんに伝えたいですね。
うきは市の柿農家は530軒。柿の収穫は9月中旬~12月中旬頃までで、甘柿の生産量は全国一。

やるね!柿

柿はアジア原産で、日本からヨーロッパやアメリカに伝わりました。名前もそのまま“カキ”と呼ばれている国も多く、実は世界で食べられているフルーツなのです!

(2020年秋の号掲載)
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