特集沖縄テロワール

2026.07.23

京都のイタリアン 「チェンチ」の坂本健シェフがハレクラニ沖縄で始動。沖縄の風土と向き合うガストロノミー


日本有数のリゾートホテルとして名高いハレクラニ沖縄。メインダイニング「SHIROUX」のコンサルティングシェフに昨年11月、新たに京都「チェンチ」の坂本健さんが就任しました。イノベーティブなイタリア料理と沖縄の素材が調和し、身体にすーっと入ってくるようなストレスフリーな香りや味。坂本シェフが新境地を拓くコースから2皿をご紹介します。

島の息吹きに抱かれてこの土地、この食材で表現するガストロノミー

多くの要素がちりばめられた料理。にもかかわらず、素材の香りや味がすーっとつながって舌や鼻に伝わり、気持ちよく融合する。シルーの料理について、坂本シェフはこのように語ります。
「素材のレイヤーづくりを大切にしています。一皿に全部混ぜて完結するよりも、あえて別々にして、それぞれの味や香りをきちんと感じとってもらうように導きます」
「車海老 ゴーヤ トマト」では、それぞれの素材が2皿に分かれてレイヤーを構成していますが、これらのつなぎ役が、ゴーヤの下にある糀のペーストと、コブミカンのグリーンオイルの存在。コブミカンのグリーンオイルはゴーヤを和えてトップフレーバーとして際立たせ、続けて食べ進めるパスタのソースにもたらして香りに共通項をもたせてつなぎます。
「香りの伝え役としてオイルは重要。たとえば生のハーブならば、香りがでるまで咀嚼しなければならないが、ハーブのフレーバーオイルは1滴で瞬間に香りの世界を創ることができる」
フレーバーオイルのベースとなるのは、太白胡麻油。素材の持ち味を伝える媒介となる、オンリーワンの油脂だといいます。香りの抑揚とともに、料理の記憶は脳に深く刻まれ、シルーでの食体験は忘れがたいものとなるのです。

SHIROUX
コンサルティングシェフ
坂本 健

1975年、京都生まれ。2014年に京都にイタリア料理「チェンチ」を開店。ミシュランガイド京都・大阪で2022年から4年連続で1ツ星を獲得する。2025年11月に「シルー」のコンサルティングシェフに就任。

車海老 ゴーヤ トマト

太白胡麻油が伝えるコブミカンの香り

前菜の一皿から。海老のビスクのように濃いソースで和えた冷製パスタの上には、コブミカンのグリーンオイルで和えた南国感のあるゴーヤのナムル。ゴーヤの下にある沖縄産糀のペーストと、ソースにたらしたコブミカンのグリーンオイルが味のつなぎ役。別皿には沖縄産トマトと炭火で炙った海老、たっぷりのシークヮーサージュースが添えられる。コブミカンのグリーンオイルは太白胡麻油と凍結状態のコブミカンの葉をミキサーにかけて濾したもので、コブミカンの香りや色彩がクリアに抽出されている。「沖縄の風土には苦みがある野菜や薬草が合う。良薬口に苦しのイメージを頭に描き、苦みを起点に料理を組み立てる発想が新たに得られました」(坂本シェフ)。りんごとカマンベールチーズのカクテルとのペアリングで。

やんばる島豚 島豆腐 米ぬか

大豆と太白胡麻油の融合が奥行きのあるソースを生む

皿の両サイドには、蒸した島豚の糠漬けと、レンコン餅と沖縄産の海藻、レタスを巻いた生春巻。中央のソースは、島豆腐と太白胡麻油、塩をペースト状にしたものと、糠を合わせたバーニャ・カウダ風の2色。シンプルなソースだが、島豆腐と太白胡麻油のうまみの掛け算で存在感を発揮。「ソースが中央にあるのがこの皿のおもしろさで、食べ方はお客様にゆだねられている。リゾートホテルのレストランなので、食事の高揚感や自由度の高いリラックス感を味と同じくらい大切にしています」(坂本シェフ)。

チェンチと同じスタイルの素材名が並ぶメニューには、沖縄の素材がちりばめられている。コースは3ヵ月ごとに変わる。

SPOT

ハレクラニ沖縄

所在地:沖縄県国頭郡恩納村名嘉真1967-1
電話:098-953-8600

SHIROUX
営業時間:17:00~22:30 (20:30L.O.)
休業日:無
https://www.okinawa.halekulani.com/
シルーのディナーはコース2万円

(2026年夏の号掲載)
※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。