特集沖縄テロワール
2026.07.14
琉球料理はクスイムン=薬。食に癒される、ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄流の食べるリトリート
青い海に囲まれた「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」で、日常から離れて心身をリフレッシュ。居心地のよい空間や空気が訪れる人々を癒してくれます。おもてなしの心にあふれる琉球料理の食体験も心身を整えるリトリートです。
沖縄リトリート「琉球料理」を愉しむ時間
海に面したレストラン「シラカチ 日本料理」は、琉球伝承料理人の嘉数順シェフが創意工夫を凝らした琉球和会席に出会える特別な空間です。450年間続いた琉球王国から長く続く食文化を伝えながら、メリハリのあるコースでリゾートホテルならではの華やかさやエンタテインメント感ある和会席に仕立てています。
琉球王国は日本の南端でありながら、世界全体を俯瞰すればむしろアジアの中心に位置します。文化の十字路と呼ばれたほど多くの国が貿易港として出入りし、多彩な文化とともに独自の琉球文化を育みました。なかでも琉球料理は、中国や薩摩藩から遣わされる使節団などをもてなすために宮廷内で発達したといわれ、中国の影響で医食同源の思想が色濃く反映されています。美しく、滋養に富む素材や調理法が生みだす品々が心も体も癒します。
琉球の食はクスイムン(薬)知恵が詰まった食文化を伝承したい
沖縄でおいしい料理を「あじくーたー」といいます。直訳すると、味が濃い。この濃いは味つけではなく、しっかりいい味がしていることを指します。そのために欠かせないのが、きちんととった濃いダシ。ダシが濃ければ、塩や調味料が少なくても味がのるので、沖縄はもともと塩分を抑えた料理が多かったといわれます。
「あじくーたーは、健康的な沖縄の食を培ってきた味わいです。この味があったから、沖縄は長寿県でした。外来の文化が入り、いろいろ混ざってちゃんぷるー文化になり、沖縄の食事から健康が損なわれて久しいですが、今またかつての沖縄の食を見直そうという気流になっています」
と嘉数シェフ。シラカチでは毎日ていねいにダシをとります。なぜならば、ダシで手を抜くと、すべての味がくずれてしまうから。この手間こそがおもてなしの心の表れでもあり、沖縄の食の根っこにあるものです。
「前菜の盛り合わせにかならず入れているミヌダルは、昔から琉球の歓待や行事、儀式の料理に欠かせない一品。黒ごまと豚肉でつくる甘じょっぱい黒ごまのペーストを、豚肉にのせて蒸した料理です。
食材の薬効などについて書かれた「御膳本草(ぎょぜんほんぞう)」(1832年)という沖縄の古書には、穀類の目録に『黒胡麻』『白胡麻』の文字があり、効能について記されています。ミヌダルも黒ごまの薬効を大切にしてつくられたのだと思います。ごまを手間をかけてする調理法は、相手を大切に思う、おもてなしの心の表れでもあります。蒸して脂を落とした豚のうまみと、黒ごまの苦みが合わさり、落ちた分の脂を黒ごまをすってでてくる油脂分が補う引き算と足し算の妙味。味よく、滋養たっぷりのクスイムンでもあり、先人の知恵に深く感じ入ります。

沖縄というテロワールが生みだした琉球料理は、理にかない、素材を生かしたすばらしいものばかり。長い歳月伝えられてきた琉球料理を、世界中の人に知ってもらい、沖縄の人たちやうちの厨房にいる若いスタッフにもあらためて伝承していきたいと思います。時に伝統のままに、そして時には過去から未来への架け橋となる革新もほどこしながら。琉球料理の継承に貢献できることを、琉球料理伝承人として誇りに思います」と嘉数シェフは語ります。

嘉数 順
1973年、那覇市生まれ。沖縄調理師専門学校卒業。2018年、ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄開業の立ち上げに携わり、シラカチ統括料理長兼副総料理長に就任。琉球料理伝承人の一人としても活躍する。
琉球和会席
前菜
長命草と苦菜、柑橘の白和え
シシかまぼこ
和三盆カステラ玉子
花烏賊
ミヌダル
沖縄県産車海老とキャビア
クーブマチ

琉球漆器で供する前菜の盛り込みは、琉球王朝時代から受け継がれてきた他国の使節団をもてなすための料理をイメージ。なかでも魚と豚でつくるシシかまぼこ、飾り切りが美しい花鳥賊、黒ごまの滋味あふれるミヌダル、クーブマチ(昆布巻)の4品は歓待料理に欠かせない。琉球和会席のスタートを華やかに彩るドリンクは、シークヮーサーとオレンジ、シャンパンでつくるミモザ。

前菜の白和えでふわっと香るのはごま油。大豆の味が濃厚な島豆腐を太香胡麻油や醤油で調えて和え衣とし、沖縄の薬草として知られる長命草と苦菜(ニガナ)、季節の柑橘を和えた一品。鼻に抜ける苦い香りと、さっぱりした酸味、太香胡麻油のかすかな焙煎香が調和する。
椀物
しかむどぅち風、合鴨つくねの澄まし仕立て
近江蒟蒻、しいたけ、青パパイヤ、かまぼこ

琉球料理の汁物のひとつ、しかむどぅちは鰹ダシを醤油で調えた澄まし汁。本来は豚肉でつくるが、合鴨でつくね仕立てにアレンジし、鰹の一番ダシで香り高い吸い地をつくり、青パパイヤやかまぼこなど沖縄の食材を椀づまとして合わせる。昆布のジントニックとペアリングすると、うまみが双方の味わいを高めあう。ジン、ラムなどペアリングのアルコールは沖縄県産を中心にセレクト。
御造り
天然本鮪 軽い炙り、辛味大根
近海魚の海ぶどうと自家製からすみ巻き
粟国の塩、柑橘
梶谷農園ハーブ、あしらい一式

御造りの白身は沖縄の近海魚を選りすぐる。この日はシチューマチ(アオダイ)。沖縄産の海ブドウと自家製カラスミを巻き、塩でさっぱりと食す。日本酒とタンカンの酒ティーニを合わせる。
焼物
シマクルーの昆布締め低温調理
島らっきょうの塩イリチー、糸唐辛子
油味噌、シークヮーサーのコンフィチュール、山葵おろし

琉球在来あぐー豚系統のシマクルー(島黒)が焼物で登場。昆布締めにしてうまみを重ね、65℃の芯温で柔らかく火入れし、甘くうまみが強い脂身も添えて供する。太白胡麻油でゆっくりソテーして辛みを飛ばした島らっきょうとの相性は抜群。豚肉を大切にすべて食べ尽くす沖縄の精神を重んじ、脂身を炒めて味噌やピーナッツと合わせた自家製油味噌を薬味のひとつとして添える。樽香がスモーキーなシェリーのハイボールとともに。
酢の物
セーイカ昆布締め、沖縄太もずく羹
長芋と沖縄おくら叩き、季節野菜
土佐酢、花穂

沖縄の素材をとりあわせた酢の物が、焼物に続く箸休めとなる。沖縄であがるセーイカは身厚だが水分が多いので、昆布締めに。もずくは食べやすく寒天で寄せて、喉ごしのいいもずく羹に仕立てる。夏が旬のオクラ、黄色が鮮やかな金美にんじんと色合いも美しい。アルコールペアリングも伊江島産のドライなラム酒とレモン、黒糖で仕立てたダイキリですっきりと。
蒸し物
テビチとイラブの玉地蒸し、イラブシンジ餡かけ
雲丹、青パパイヤ、芽葱

沖縄を代表する伝統素材イラブは、神の使いと呼ばれるエラブウミヘビを燻製した保存食。ていねいに下処理してくさみを取り、7時間もかけて煎じたエキスを玉地蒸し(茶碗蒸し)の餡に仕立てている。煎じエキスはシンジと呼ばれ、猪口一杯を飲むだけで滋養強壮に効くといわれるほど。昔はひと月かけて船旅をしてきた使節団の疲労を癒すために、もてなしの席でふるまわれたという。7年物の泡盛とともに。

御食事
琉球すっぽんの沖縄そば
酢橘、焼餅、九条葱

近代になってから沖縄で養殖が盛んになったすっぽんで上品なダシをとり、沖縄そばで締める。10年物の泡盛を水割りで。会席の後半では、熟成した泡盛を飲み比べるペアリングも愉しい。
甘味
ターンムディンガク大福仕立て 黒糖生姜の風味
ミニ闘鶏餃(タウチーチャオ)
本日の水菓子

伝統菓子と沖縄産の旬のフルーツの盛り合わせを、キンキンに冷やした21年熟成の泡盛と愉しむ。田芋(ターンム)と砂糖を練って黒糖とショウガで田楽をつくり、それを餡として求肥で包んで大福に。闘鶏餃は小麦とラードでつくるパイのような軽い生地で、すり胡麻とピーナッツの餡や柑橘を包んで揚げた宮廷菓子。
ショップ「マーケット」では、スイーツで心の癒やしを

ロビーフロアにあるショップ「マーケット」では、テイクアウトのケーキやコーヒーなどを販売。ケーキの一番人気は、シーズンごとに登場するロールケーキです。太白胡麻油でつくる生地はキメ細かく、軽い食感。生地には沖縄県産イチゴの自家製ジャムをぬり、アクセントに。ロール生地とフィリングのクレーム・シャンティイのバランスが抜群で、甘さも控えめなので、アメリカンなボリュームサイズでもさらっと食べられます。イチゴのシーズンの後は、黒糖ロールが登場します。
ごま油の香りは元気のもと!
嘉数シェフが琉球料理で太香胡麻油を生かした2品のアイデアをおしえてくれました。県外でも人気があるおかず「にんじんしりしり」と、沖縄では旧盆のお供え物に欠かせない炊き込みごはん「ジューシー」を香りよくおいしく味わえます。太香胡麻油をきかせたにんじんしりしりは、サラダ感覚でモリモリ食べられる沖縄版「キャロットラペ」。ごはんにのせれば“にんじんしりしり丼”にもなります!カフェなどのメニューで流行りそうな予感。
ジューシー

仕上げに混ぜ込むラードのかわりに、太香胡麻油でつくった手づくりマヨネーズを上にのせ、薬味としてフーチバー(ヨモギの一種)をちらすアレンジ版。「ジューシーは豚のダシを入れて炊くので、ごま油を入れてもそれほど香りが残りません。香りをあとのせするのが、断然おすすめ」(嘉数シェフ)。ジューシーの豚や野菜の風味と“太香マヨ”の組み合わせは、まさかの絶品です。
にんじんしりしり

細切りにしたにんじんを炒めるのは、太白胡麻油で。しんなりするまでゆっくり炒めて、甘みを引きだします。香りよく仕上げるコツは、最後に加える溶き卵に太香胡麻油を入れておくこと。卵が太香胡麻油の香りを抱き込むので、とてもいい香りが残ります(ありそうでなかったコツ!)。冷めても香り豊か。


SPOT
ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄
所在地:沖縄県国頭郡恩納村瀬良垣1108
電話:098ー960ー4321
シラカチ 日本料理
営業時間:17:00~21:00
定休日:日
マーケット
営業時間:9:00~22:00(ケーキ販売11:00~)
定休日:無
https://www.hyatt.com/hyatt-regency/ja-JP/okaro-hyatt-regency-seragaki-island-okinawa
琉球和会席(2万2000円)は前日正午までに要予約
(2026年夏の号掲載)
※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。