特集魚食の口福

2023.02.24

奥が深いぞ、深海魚!荻野伸也シェフと一緒に蒲郡の深海魚6種類を味わいつくす


ウマイぞ!蒲郡の深海魚、推し活

マルホン胡麻油のホームタウン、愛知県蒲郡市は三河湾に面した海の町。なかでも水深200メートル以上の海域から水揚げされる「深海魚」が名物のひとつです。食べてうまい深海魚の推しをラインナップし、地元出身の荻野伸也シェフがおいしい料理をつくりました!

「深海魚」とは、水深200m以上の海に住む魚介類のこと。ちなみにこの深さはビル60階分に相当します(!)。光がほとんど届かず暗く、水温は低く、水圧が高く、エサも少ない…という生きるのが大変な環境で棲み暮らす深海魚は、他の魚たちと比べて独特の進化を遂げてきたといわれています。ギラリと光る大きな目も、そんな進化のひとつです。深海では活発に動かずゆっくりと泳ぐため、脂肪をたくわえ、脂がのっているのも特徴です。近年までは地元消費が中心でしたが、今では高級魚に昇格して大都市で消費されたり、メヒカリのように有名になったりした深海魚もたくさんいます。もっと蒲郡の深海魚の魅力を知ってもらうために、深海魚を味わう料理をご紹介します。

アマダイ

英名Horsehead tilefish。目の上からストンと落ちるユニークな面構え。水深90〜200mに住み、体長は雄だと60cmにまでなるものも。水分が多く柔らかい身で上品な味わい、高級魚として扱われる。和食や天ぷらではウロコを引かずに加熱し、ウロコのサクサクと軽い食感を生かした松笠揚げ(ウロコ揚げ)が有名。漁期は夏以外で、旬は寒い時季。

黒ムツ

英名Japanese bluefish、Bigeye。水深200〜500mに住み、体長は60cm以上。身は締まっているが脂がのり、加熱しても柔らかさを保つ。旬は冬〜初春。
蒲郡市農林水産課ホームページより引用

キンメダイ

英名Splendid alfonsino。水深約100〜800mに住み、海中で大きな目が金色に光るのでこの名前がついている。体長は50〜60cm。脂はのっているがクセがなく、身も柔らかいので、調理法は多彩。通年水揚げされるが、冬はとくに脂がのる。

メヒカリ

正式名称はアオメエソ。英名Bigeyed greeneye。目がエメラルグリーンに光っているので「目光」と呼ばれ、鮮度がよいものほど目の色が鮮やか。水深200〜600mに住み、体長約15cmの体に脂がしっかりのってうまみが強く、身質は柔らかくしっとりほろほろ。漁期は夏以外だが、一番の旬は冬。代表的な食べ方はからあげや一夜干し。
蒲郡市農林水産課ホームページより引用

ワガ

カサゴの一種で、正式名はユメカサゴ。英名Scorpion fish 。水深130mから980mの砂泥地に生息する。体長20〜30cmで鮮やかな赤みを帯びた色。加熱しても身が柔らかく、煮つけにするのが定番。メヒカリと並び人気がある高級魚。漁期は夏以外で、冬が旬。
蒲郡市農林水産課ホームページより引用

ホウカイボウ

正式名はヨロイイタチウオ。蒲郡ではホウカイとも呼ばれ、関東ではヒゲダラと呼ばれる。英名Armoured cusk。水深70〜440mの砂泥地に住み、体長は70cm前後になる。大型は高級魚として扱われて首都圏でも人気があるが、小型は加工品の原料になる。熱を通しても柔らかい繊維質を保ち、硬く締まらない。

こんな深海魚もいます

蒲郡でよく水揚げされる深海魚はまだまだたくさん。ハダカイワシ、ニギス、赤座エビ、タカアシガニなどのほか、ノドグロとして有名になった赤ムツも深海魚。

蒲郡漁協の寿丸ではシルクアイスで深海魚の鮮度を保持

蒲郡には深海魚漁船が4隻。そのうち2015年に建造した実証船「寿丸」は、殺菌海水をシャーベット状に凍結する装置を完備し、沖合底引き網で引き揚げた魚たちを、船倉で素早く保冷して鮮度を保持しています。これによって魚の鮮度は数倍も向上し、おいしい深海魚が市場に並ぶようになりました。

SDGsな深海味ラーメン

メヒカリをからあげやフライにした残りの頭やアラを捨てずに活用した魚醤を、地元の三谷水産高等学校の生徒と企業が共同開発。 味噌ベースにメヒカリの魚醤、太香胡麻油の香りがきいたラーメンはお土産としても人気。
https://sasayagama.base.shop/

おいしいぞ、深海魚!

深海魚6種類を味わいつくす料理を、荻野伸也シェフが紹介します!
6本のレシピはコチラからどうぞ!
https://gomashiki.gomaabura.jp/content/uploads/2022/12/web_gomashiki146_221212.pdf

黒ムツのアンチョビチーズ焼き

フレンチ版味噌漬けのイメージで。クリームチーズとアンチョビ、太香胡麻油、ハーブなど12種類の材料を合わせたアンチョビチーズソースをつくり、生の黒ムツのフィレにたっぷりとぬる。グリルは表面は香ばしく、内側は半生程度にすると繊細な持ち味を楽しめる。

Ogino’s tip
繊細な身質が特徴なので、フライパンなどで直接焼くよりも、このアンチョビチーズソースなどを介して間接的に火入れするのが向く魚です。うまみも濃厚なので、濃い味わいと組み合わせても負けません。

アマダイの開き 南仏風

アマダイを開きにし、白ワインとナンプラーを海水程度の塩分濃度にしたマリネ液で下味。ハーブとドライトマト、黒オリーブをのせて一夜干しにし、仕上げに香ばしさをだすために太香胡麻油をぬる。

Ogino’s tip
アマダイはほぐれるように柔らかいので、開きで一夜干しにして余分な水分を抜き、身を締めてうまみも濃くします。

キンメダイとドライフルーツのマリネ

キンメダイは3枚におろし、軽く塩をして脱水し、酢で締める。皮をあぶってカットし、太香胡麻油、乾燥レモンとミカン、黒オリーブ、チェダーチーズとともに、柑橘類の甘みをほんのり感じる洒落たマリネに。蒲郡の名産品ミカンも活用。

Ogino’s tip
繊細な身質と鮮やかな赤色が特徴なので、皮も残してあぶり、香ばしく食べやすく仕立てました。酢締めのあとに太香胡麻油でマリネするので、味の奥行きが増します。

ホウカイボウのピリ辛フィッシュミートソース

ソースのベースは、ホウカイボウの頭と中骨をしっかり煮詰めた濃いダシ。身は純正ごまラー油と純ねり胡麻 白ソフトパウチで細かくほぐしながら炒め、トマト水煮や白ワインとともに煮る。ごまのコクとピリ辛がきいた風味に、ほろほろした繊維質を感じるフィッシュミートソースは贅沢な味わい。

Ogino’s tip
ホウカイボウは関東でも知る人ぞ知るうまい魚ナンバーワン。肉のようにうまみが強く、ゼラチン質も豊富。ただし水分が多くて身がくずれやすいので、調理にはひと手間の工夫が必要です。あえて身をくずしながら炒めて、持ち味を最大限に引きだしました。

メヒカリのコンフィ アヒージョ仕立て

頭と内臓を取り、塩水に30分漬けたメヒカリを、太香胡麻油とニンニク、タイム、レモンでじっくりと30分以上かけてコンフィに。最後はマッシュルームやミニトマトとグツグツ煮てアヒージョに仕上げる。

Ogino’s tip
身も骨も柔らかいので丸ごとからあげや天ぷらでよく食べますが、それでも少し気になる骨をさらに食べやすくするため、太香胡麻油でゆっくり煮てコンフィにしました。

ワガのモロッコ風煮込み

煮つけでよく食べるワガを、クミンパウダーやプチトマトとともにエキゾチックテイストな煮込みに。太香胡麻油と純ねり胡麻 白ソフトパウチで煮込んでうまみを増し、仕上げの香りづけも太香胡麻油で。

Ogino’s tip
ワガは可食部が少ないですが、とてもよい味がでる魚です。フィレにおろさず、丸ごと煮ることにより、カサゴの味わいを煮込みのスープにも余すことなく引きだします。

こんな深海魚のそうざいセットがあったらいいな

深海魚のおいしさを全面アピールしたフレンチのそうざいがあれば、人気になるはず。ビールもワインも合う、ハッピーなテーブルに!

身が柔らかい!煮ても、焼いても、マリネでも
荻野伸也
1978年、愛知県蒲郡市生まれ。「レストランオギノ」「ターブルオギノ」のオーナーシェフを経て、現在は次なる開店準備をしながら充電中。海山を心から愛するアウトドア派。著書も多数。

協力/蒲郡漁業協同組合 http://www.gamagori-gyokyo.com/
蒲郡市農林水産課 https://www.city.gamagori.lg.jp/unit/norin/
味のヤマスイ http://www.yamasui.net/
参考文献・資料/「原色魚類検索図鑑Ⅰ」阿部宗明(北隆館)
「あいちのおさかなBook 2018」愛知県農林水産局水産課
がまごおり、ナビ https://www.gamagori.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 https://www.zukan-bouz.com/

(2022年冬の号掲載)
 ※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。