特集香り推し活

2024.01.18

香味と素材がからみあう未体験のごま油ペアリング。「天ぷら前平」の前平さんはキスをごま油のうまみで揚げる


ギークな焙煎香 未体験のごま油ペアリング

焙煎ごま油がもつ香りやうまみはとても奥深く、焙煎の度合などによって香味には幅があります。
焙煎ごま油にフィーチャーして「天ぷら」「イタリアン」「豆腐」「洋食のフライ」との相性をディープに探りました。ごま油の香味と素材がからみあい、料理が進化します。

てんぷら前平
繊細な素材に寄り添う×太香胡麻油 淡(うす)の香味

油は天ぷらの調味料といわれます。「てんぷら前平」の揚げ油は太白胡麻油3対太香胡麻油 淡1の割合。このブレンドが前平智一さんの天ぷらの味を決める極意です。
「僕にとって太香胡麻油 淡は、香りづけではなく、素材の風味やうまみを引きだしてくれる油です。秋号の企画でも話しましたが(下記QRコードの記事参照)、たとえば淡白な天種の代表格といわれるキスは、太香胡麻油 淡を入れて揚げたほうが断然うまくなります。キス自体のうまみが増して、あぁうまいキスだと感じてもらえるんです」
と前平さん。確かに食べてみると、衣は太香胡麻油 淡の香りやうまみをまとっていますが、それだけではありません。咀嚼とともに鼻腔に抜けあがる香りと、キスの味わいをあたかも口中調理しているかのようで、キスのうまみも明らかに上がっています。
「香りよりも、僕はむしろ“うまみ„がこの油の肝だと思うんです。香りは揚げているうちに少しずつ飛びますが、ごまのうまみは残ります。素材の雑味など隠したい風味をいい塩梅にマスキングしながら、うまみを増してくれるのが太香胡麻油 淡。素材を生かすなら太白胡麻油とよくいわれますが、僕はむしろ逆で、素材に寄り添うなら焙煎ごま油をブレンドしたほうがいいと思っています」
ただし、前平さんはコースの後半は揚げ油を太白胡麻油のみに切りかえます。それは、香りやうまみが続くと、15品ほど続くコースでは食べ疲れてしまいがちだからといいます。素材との相性も大事ですが、コースの流れと油の相性をうまくコントロールすることも大切。そうすれば一品一品それぞれが印象に残り、食後もすっきりと軽くおさまるのです。

前平さんが「焙煎ごま油をブレンドしたほうが絶対にうまい天種」として選んだのはイカ、銀杏、海老、キスの4品。
写真左が太白胡麻油3対太香胡麻油 淡1で合わせた揚げ油、右が太白胡麻油100%。コースの途中で揚げ油を変えるため、ふたつの鍋を用いる。3対1の割合は前平さんが太香胡麻油 淡の香味をもっともよく生かせると考えるブレンド。
太香胡麻油 淡(うす)は業務用の焙煎ごま油。太香胡麻油のラインナップは焙煎度合に応じて太香胡麻油 濃(こい)、太香胡麻油 淡、太香胡麻油 極淡(ごくうす)の3品がある。

ある日のコースの流れ

コースの流れの中で香りをコントロール。前半は太白胡麻油に太香胡麻油 淡をブレンドした油で揚げ、後半は太白胡麻油100%で揚げる。天種は序盤は繊細なものからはじまり、後半になるほどリッチな素材にシフトする。

前平智一
1971年、埼玉生まれ。「天政」で8年半修業後、山の上ホテルに入社し「てんぷら山の上」で20年研鑽を積む。2017年に「前平」を開店。

SPOT

てんぷら前平

所在地:東京都港区麻布十番2-8-16 ISIビル4F
電話:03-6435-1996 
営業時間:17:00~20:30最終入店
休業日:日、祝
カウンター9席、コース2万5300円~。要予約

▼ マルホン天ぷら研鑽会「太白胡麻油100%か、焙煎ごま油を合わせるか」の記事はこちら
マルホン天ぷら研鑽会 太白胡麻油・特別篇2:揚げ油は、太白胡麻油100%か、焙煎ごま油とのミッ
クスか

(2023年冬の号掲載)
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