特集香り推し活

2024.02.08

ごま油が洋食のフライをおいしくする!「フリッツ」の田苗見シェフに習う、攻めのブレンドの妙


ギークな焙煎香 未体験のごま油ペアリング

焙煎ごま油がもつ香りやうまみはとても奥深く、焙煎の度合などによって香味には幅があります。焙煎ごま油にフィーチャーして「天ぷら」「イタリアン」「豆腐」「洋食のフライ」との相性をディープに探りました。ごま油の香味と素材がからみあい、料理が進化します。

フリッツ
洋食の花形フライ×パン粉にごま油が合う

「フリッツ」はフライ推しの洋食店。かつてフライの名店といわれた東京・赤坂の「フリッツ」で修業した田苗見賢太シェフが店名を譲り受け、フリッツ魂を受け継いでいます。
同店の揚げ油は焙煎ごま油が軽さと香ばしさ、うまみのカギを握っています。今回は揚げ油のブレンド実験を依頼。ベースは太白胡麻油で統一し、ブレンドした焙煎ごま油は太香胡麻油、圧搾純正胡麻油、圧搾純正胡麻油 濃口、胡麻油 一番搾りの4種類。素材別に揚げ油とのペアリングを試した結果、田苗見シェフがベストペアリングに選んだのが4つのブレンドです。
「ここまでこだわって揚げ油をブレンドしたのは初の試みで、焙煎ごま油を2〜3割ブレンドしました。ごま油を嗅いだ時のイメージと、加熱して揚げた後では香りの出方が違います。ごま油の香ばしさは揮発してマイルドになるので、それがパン粉と合わさるとほどよい香味に変わるんです」
と田苗見シェフ。揚げ油とのペアリングで、素材のクオリティはまちがいなく上がります。

フライのメニューが多い洋食では、揚げ油は重要。田苗見シェフは軽さを求めるためラードは使わず、コーンオイルに焙煎ごま油をブレンドした油(平成のフライオイルC-1・業務用)で揚げている。焙煎ごま油をブレンドすると、香りやうまみが増すだけでなく、揚げ油のもちがよくなる。

アジフライ

魚のネガティブな風味をマスキングする胡麻油 一番搾りの香り

衣の香りはさほど強くなく、ごま油の香りはほんのり程度。ところがアジのファーストアタックは干物を思わせるほどうまみが増し、余韻は衣の油脂と相まってクリーミーに調和する。ベースの太白胡麻油を7割に抑え、香り立ちも余韻も強い胡麻油 一番搾りを3割入れることにより、魚特有のにおいをマスキングできるブレンド。青魚のイワシフライやサバの竜田揚げにもおすすめだ。

帆立フライ

パン粉が抜群に香ばしくなるブレンド

帆立フライは高温で短時間で揚げ、内側はレアに。高温で揚げた衣はとても香ばしく、胡麻油 一番搾りがしっかりと香り立つ。胡麻油 一番搾りはガスクロ分析によるとパンと共通の香り成分があるので、パン粉との相性がよく、フライの香ばしさがとくに際立つ。一方、太香胡麻油も胡麻油 一番搾りを支えるようにそこはかとなく香りを感じさせるため、ふたつの焙煎ごま油による奥深い香ばしさが生まれる。

エビフライ

素材と衣がまろやかに調和するブレンド

太白胡麻油を8割と多めにし、太香胡麻油で香りの土台をつくり、圧搾純正胡麻油をエッセンスのように立たせたブレンド。海老の甘さやうまみがしっかり浮きあがる一方で、ごま油の香りが移ったパン粉と海老の風味がまろやかにつながっているようなハーモニーがある。ヒレカツや牡蛎フライもこのブレンドと相性がよく、豚肉の余韻が長く残り、牡蛎は磯の風味が際立つ。

メンチカツ

うまみ香味増しで冷めてもうまい!

ごま油4種類を贅沢にブレンドしたオイルだが、複雑な香りのハーモニーから圧搾純正胡麻油 濃口のビター感がある香りが飛びだしてきて絶妙のアクセントになる。メンチの肉ダネに入っているナツメグ、コショウなどのスパイスやマスタードの香りとの相性が抜群。ウスターや中濃ソースともすこぶる◎。冷めるとさらに香味やうまみが増し増しの味わいになるので、お弁当のおかずの揚げ油としてもおすすめ。

フリッツでは時折、ごま油をアクセントにしたアラカルトも登場。アボカドとトマトのマリネは圧搾純正胡麻油 濃口と醤油のドレッシングで。
海老とブロッコリーのアヒージョは胡麻油 一番搾りとキャノーラ油を同割で、ニンニクと一緒にグツグツ。香りがほんのりただよい食欲をそそる。
田苗見賢太
1980年、東京生まれ。赤坂「旬香亭」やその姉妹店「フリッツ」(ともに現在閉店)で15年勤務し、店名を譲り受けて2016年に現店舗「フリッツ」を開店。

SPOT

フリッツ

所在地:東京都文京区小石川2-25-16 リリオ小石川2F
電話:03-3830-0235
営業時間:11:30~14:00、18:00~20:00
休業日:月
http://fritts.jp/
ランチのセットは2000円~、アラカルトも豊富