特集水と油

2023.03.28

第3回ベスト・オブ・モンディアル・デュ・パン優勝!「コム・ン」大澤シェフの“食べやすいパン”のレシピを大公開~バゲット太香・太白食パン~


東京・九品仏の「コム・ン」はいつも店内にお客があふれている人気店。人気の理由のひとつは、同店のパンの食べやすさです。「ヨーロッパから伝わってきたパンの製法を尊重しながら、日本人が食べやすいパンをめざしています。日本人はだ液の量が少ないので、ヨーロッパの人たちと同じものを食べても、パサついて感じやすい。だから、パンの保湿感は大切です。また、クラムもクラストもヒキが少なくて、食べるときにストレスを感じないパンをつくりたいと思っています」
とオーナーシェフの大澤秀一さん。保湿、ヒキを抑えるという点で活用しているのが太白胡麻油や太香胡麻油です。油脂はグルテンの形成を阻害するので、もろい食感になり、ヒキも少なくなります。他の油脂も試してみたものの、ごま油の効果が一番だったと大澤さんはいいます。
「太白胡麻油はシンプルな生地に、太香胡麻油はそうざいパンなどにアレンジする生地にと使い分けています。油脂が入っていることを感じさせず、でも製パン上の効果を得るためには、10%の配合を目安にするのがおすすめです」

ごま油の“隠し油脂”効果

コム・ンが追い求める食べやすいパンのひとつの姿が、グルテンフリーのパン。スタッフの一人が小麦アレルギーを発症して仕事を続けられなくなったことをきっかけに、グルテンフリーのパンの専門店をはじめました。小麦粉のパンとは素材選びも製法もまったくちがうグルテンフリーのパンでも、ごま油は保湿性を発揮しています。

モナカ!?のごとくカリカリッともろく軽い歯切れ、ライ麦のバゲットもパサつかずほんのり香ばしい。バゲット太香にハムや生ハム、カマンベールをはさんだカスクルートは、感動もの!の食べやすさ。バゲットのこの食感は太香胡麻油の配合が生むもの。

パン愛が生みだすコム・ンの食べやすいパン

人気ベーカリー「コム・ン」の大澤秀一さんのパンは、だれもがパン好きになるほど食べやすく、愛情にあふれています。太白胡麻油や太香胡麻油が「食べやすさ」のポイントになるレシピをご紹介します。

※分量はベーカーズパーセントで表記しています。
※発酵、焼成などの時間、温度は目安です。
※基本生地をアレンジするレシピは、基本とはちがう工程のみ記しています。

バゲット太香

ライ麦配合のバゲットを食べやすく、軽い歯触りのクラストに。“隠し油脂”として太香胡麻油を10%配合すると、グルテンを適度に切って生地がもろくなり、ヒキを抑えることができます。ライ麦との相性も◎。

RECIPE

バゲット太香

分量(%)

フランスパン用粉(リスドオル/日清製粉)…80% ライ麦粉(細挽)… 20% 塩…1.8% モルト…0.05% ルヴァンリキッド…0.1% 生イースト…0.1% 水…80% 太香胡麻油…10%

  1. 【ミキシング】全材料を手でざっくりと混ぜる
  2. 【こねあげ温度】23℃
  3. 【1次発酵】60分→パンチ→18℃のホイロで12~15時間→パンチ→180分
  4. 【分割】300g
  5. 【ベンチタイム】30分
  6. 【成形】バゲット形
  7. 【最終発酵】18℃のホイロで20分
  8. 【焼成】クープを入れ、上・下火250℃で20分

バゲット太香の生地から生まれるアレンジ例。少量配合した太香胡麻油がライ麦の風味と相まって、心地よい香ばしさがあるので、クルミやオリーブのフィリングとのペアリングも抜群。クロックムッシュのようなそうざいパンにも向いている。ごま油として主張させず、「いつものバゲットとちょっとちがう!?」と感じさせる味の加減が肝。

オリーブのフーガス

オリーブのフーガスは香ばしくジューシー

【ミキシング】「バゲット太香」の生地1㎏に対して、黒・緑オリーブ各100g(混ぜ合わせて太香胡麻油20g で表面をコーティング)
【分割】300g
【成形】麺棒で楕円形にのばし、カードで切り目を4 ヵ所入れる
【焼成】15 分

クルミバゲット

太香胡麻油でコーティングしたクルミ入りバゲット

【ミキシング】「バゲット太香」の生地1㎏に対して、クルミ200g(太香胡麻油20gで表面をコーティング)
【分割】200g
【成形】棒状にしてねじる
【焼成】18分

クロックムッシュ

太香胡麻油のベシャメルでクロックムッシュに

【仕上げ】ベシャメルソース100g に対して、太香胡麻油20gを加える。 「バゲット太香」を3 等分に切って半分にスライスし、ハムとチーズをのせ、ベシャメルソースをぬる。オーブンで焼き、焼きあがりの表面に太香胡麻油少量をぬって香りづけする

フィリングはごま油コーティングで下準備

ナッツやドライフルーツは、表面をごま油でコーティングしてから練り込むと、生地の水分を吸わず、焼きあがりの生地のパサつきを防ぐことができる。オリーブなどもみずみずしくジューシーに。

太白食パン

「一番シンプルなおいしさにしたい」と大澤さんがいう太白食パンは、ほんのり甘めでリッチなのに、ピュアですっきりとしたあと味。モチモチ、ムッチリとした保湿感たっぷりの食感。

RECIPE

太白食パン

分量(%)

湯種[薄力粉(バイオレット/日清製粉)…20% きび砂糖…2% 塩…2% 熱湯…41%] 本ごね[強力粉(カメリヤ/日清製粉)…80% きび砂糖…5% セミドライイースト…1% ルヴァンリキッド…10% 豆乳…15% 水…37% 太白胡麻油…10%]

  1. 【湯種】前日に全材料を混ぜ合わせて一晩おく
  2. 【ミキシング】本ごねの太白胡麻油以外の材料と湯種を低速3分→ 中速4分→高速3分→太白胡麻油を入れる→低速2分→中速4分
  3. 【こねあげ温度】27℃
  4. 【1次発酵】50~60分
  5. 【分割】500g
  6. 【ベンチタイム】20分
  7. 【成形】1斤型に入れる
  8. 【最終発酵】32℃のホイロで50~60分
  9. 【焼成】上・下火215℃で25分
太白食パンはシンプルだからアレンジの幅が広い

太白食パンには、太白胡麻油を10%配合。生地はしっとりと保湿感たっぷりながら、クラストはヒキがなく噛み切りやすいのがポイント。シンプルな味わいを生かすため乳製品を使っていないので、ヴィーガンにも対応。

くるみブレッド

生地はしっとり、クルミは香ばしくコクたっぷり。その理由は、クルミを太白胡麻油でコーティングしてから練り込むため。オイルの膜が生地からクルミへの水分移行を防ぎ、生地のパサつきをなくすだけでなく、クルミの風味も逃しません。

【ミキシング】「 太白食パン」生地1㎏に対して、クルミ200g(太白胡麻油20gで表面をコーティング)
【分割】500g
【成形】ワンローフ型に入れる
【焼成】上火220℃/下火200℃で18分

あんぱん

フィリングを入れて成形しても、生地のヒキがないので食べやすい。各種あんこのほか、そうざい系のアレンジも。

【分割】60g
【成形】白あん50gを包餡
【焼成】上面に十字のクープを入れ、上火250 ℃/ 下火200 ℃で8~10分

コム・ン 大澤秀一
1986年生まれ。神戸「サ・マーシュ」で西川功晃シェフに6年間師事した後、2018年に故郷の群馬・高崎に「コム・ン」を開店。2019年の第7回モンディアル・デュ・パンでは総合優勝を果たす。2020年に「コム・ンTOKYO」、2022年に「コム・ンGLUTEN FREE」をオープン。

SPOT

Comme’N TOKYO

所在地:東京都世田谷区奥沢7-18-5 1F
営業時間:7:00~18:00
休業日:無
https://commen.jp/
常時100アイテムのパンが並ぶ本店は、広い厨房がオープンキッチンでいつも活気にあふれている

SPOT

Comme’N GLUTEN FREE

所在地:東京都世田谷区奥沢7-19-12
営業時間:7:00~18:00
休業日:火・水
https://commen-gf.jp/
本店の向かいにあるグルテンフリーの専門店。パンやフィリングをセレクトしてその場でつくってもらうサンドイッチやホットドッグが人気

(2023年春の号掲載)
 ※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。