特集笑う門には福来る

2021.12.16

よく笑う人は健康的!?「笑う門には福来る」を科学する、笑いがくれる2つの効果


脳科学が裏づける「笑い」の2つの効果

笑う門には福来る。この諺を裏づける脳科学のエビデンスが近年数多く発表され、「笑う」ことの大切さが実証されています。その2つの大きな効果とは!?

笑いにはさまざまな効果があることが学術研究によって明らかになっています。笑いによる代表的な健康増進効果のひとつとして、「免疫力の向上」があげられます。

ベネットらの研究グループは、笑いを誘うビデオを観て大笑いした人ほど、体内で主要な免疫機能を担うナチュラルキラー細胞(NK)の活性化が高まることを発見しました。一方で、たいへん興味深いことに、笑いの量が少ない人にはこの効果が認められず、
"笑うこと"自体に免疫力を高める効果があることを示唆しています(※1)。

笑いを含めた"表情"はヒト同士のコミュニケーションを行なう上でのきわめて重要なシグナルで、ヒトの脳の中には顔や表情に特異的に反応する脳部位があります。

笑いが起きると、脳にどのような変化が起こるのでしょうか。その一例として、ヒト同士の社会的なつながりの形成を促す脳内ホルモン"オピオイド"の放出増加があげられます(※2)。

マンニネンらの研究グループは、コメディを視聴している際のヒト脳活動を計測し、脳内の複数個所でオピオイド放出が増加することを発見しました(※3)。この知見は、笑いがヒト同士のつながりの形成を促進する可能性、端的にいうと "笑顔がヒトをつなぐ"可能性を示唆しています。NTTデータ経営研究所が松竹芸能らと実施した実証研究でもその可能性が裏づけられています(※4)。

笑いは健康増進だけでなく、ヒトとヒトのつながり─すなわち社会も元気にする、というと現時点ではいいすぎかもしれません。しかし、それを裏づけるエビデンスは近年増えつつあります。

コロナ禍の今こそ、ヒトと社会を元気にするための"笑い"は注目する価値があるのではないでしょうか。

※1 Bennett M et al., The effect of mirthful laughter on stress and natural killer cell activity, Alternative Therapies in Health Medicine(2003)
※2 Juulia T. Suvilehto et al., Topography of social touching depends on emotional bonds between humans, PNAS(2015)
※3 Sandra Manninen et al., Social Laughter Triggers Endogenous Opioid Release in Humans, The Journal of Neuroscience(2017)
※4 体験型研修「笑育(わらいく)」が、コミュニケーションスキルの向上に寄与 ~脳科学に基づく効果検証で、自己主張スキルが27.2%アップするなどの効果が明らかに~、株式会社NTTデータ経営研究所他(2020年10月30日)

山崎和行

(株)NTTデータ経営研究所 情報未来イノベーション本部 ニューロイノベーションユニット シニアマネージャー
脳科学の見地に基づく多様なコンサルティング事業に従事。「笑い」に関しては、松竹芸能が展開する研修サービス「笑育(わらいく)」の実証研究を実施。

(2021年春の号掲載)
 ※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。