特集水と油

2023.04.11

油と混ざる水がある!温泉水99とごま油が生みだすニューテイスト「乳化ウォーター」


乳化のお楽しみ

水と油は相容れぬ関係。水に油を注いでも、油は上に浮きあがって二層に分かれます。ところが強く撹拌したり、水と油をつなぐ素材とともに混ぜたりすると、水と油は乳化し、えもいわれぬ美味やなめらかなテクスチャーが生まれます。料理の大切なキーワードでもある「乳化」をテーマに、水と油について考えました。
取材協力/ 山崎英恵(龍谷大学農学部食品栄養学科 教授)
参考文献/「油のマジック―おいしさを引き出す油の力―」島田淳子( 建帛社)

この検証のきっかけは、「温泉水99」との出会いでした。美容や健康にいいミネラルウォーターとして大きな注目を集めている同商品ですが、ボトルのラベルに「油と混ざる水」と堂々アピールされているのです! 温泉水99が油と混ざる理由は、①水のクラスターが極微小、② pH値が約9.9でアルカリ性が強い、③温泉水の成分の特徴でもあるメタケイ酸には乳化を高める効果がある、といった点があげられています。「温泉水99とごま油の乳化」という視点から、編集部の検証をご覧ください。

その1:温泉水99×ごま油で「乳化ウォーター」が生まれました

[検証A]温泉水99は油と乳化する

温泉水99は水にもかかわらず、油と混ぜると乳化します。油脂のなかでもとくにごま油は乳化状態が良好。オリーブ油、米油、サラダ油なども乳化はするものの、一番安定するのはごま油という検証結果がでています。

驚き!

常温の温泉水99(右)、水道水(左)各100mlに、ごま油5mlを入れ、ボトルをよく振り混ぜた状態を比較。水道水はすぐに分離したが、温泉水99は1年以上経過してもほぼ乳化したままを維持している。
サンプル提供:エスオーシー(株)

[検証B]ごま油は水と乳化しやすい

料理人やパティシエからよく聞くのが、「ごま油を使うと乳化しやすい」という声。さらにこれらの現場の声をあと押しする、【検証A】の結果。果たしてごま油は他の油脂よりも乳化しやすいのか!? 水道水と混ぜ、編集部で実験しました。

納得!

水道水100mlに、太白胡麻油(左)、サラダ油(右)各20mlを入れ、よく振り混ぜた状態を比較。直後はどちらも混ざって白濁するが、時間が経過すると分離しはじめる。15分後を比較すると、太白胡麻油のほうが混ざっている部分(下層)の乳白色が濃く、乳化度合が高いことがわかる。

[検証C]乳化によるコクが味覚の満足度を高める

温泉水99と太白胡麻油に、乳化作用を助ける塩を配合。みずみずしくもコクがあり、ダシのようなおいしさが生まれました。これをうまく活用すれば、料理の減塩にもつながります。

減塩効果も!?

温泉水99を100gに対して、太白胡麻油50g、塩2gを加えてよく振り混ぜた状態を、編集部で試食・官能評価。塩により乳化度合が増し、乳白色が濃く、とろみのあるテクスチャーになる。塩分はほぼ感じないが、乳味に似た風味やコクがダシのような効果を発揮し、塩味の物たりなさを感じさせない。

[検証D]新発見「みずみずしいごま油」を探る

混じりあわないはずの水とごま油が融けあえば、新たなおいしさが生まれるはず。油のコクをもちながらも、みずみずしさを感じさせる逸品を生みだしたい。そのための検証を試みました。

太白胡麻油10%:透明感のある白色。舌では水のテクスチャーを感じつつ、若干のうまみなどの油脂感も感じとることができる。みずみずしい油という点で秀逸な配合。
太白胡麻油50%:牛乳のような濃い白色に。乳化によるまろやかさが増し、油脂のコクがでてくるが、みずみずしさもある。ドレッシングやタレのベースなどに使うと、油脂の半分を水分に置き換えることになるので、カロリーダウンのレシピなどに活用できる。

温泉水99を100gに対して、太白胡麻油10g、50gをそれぞれ加えてよく振り混ぜた状態を比較。全体が白濁して乳化するが、太白胡麻油の濃度が高くなるにしたがって白色も濃くなる。編集部で試食・官能評価をすると、いずれも油脂のコクとみずみずしさが共存し、「みずみずしいごま油」であった。

冷たい鯛茶漬け / recipe:山田武志(ペタンク)

水と油のニューテイスト、乳化ウォーター

浅草「ペタンク」の山田武志シェフが、ダシのかわりに温泉水99と胡麻油 一番搾りを混ぜるだけの「乳化ウォーター」のレシピをご紹介します。シャカシャカとシェイクするだけでつくれるのに、驚きのうまみとまろみ、かつすっきりした味わいの冷たい鯛茶漬けに。薬味を大葉やミョウガにすれば和風、パクチーにすればエスニック風に。そうめんも合います。

RECIPE

冷たい鯛茶漬け

材料/1人分

A[赤玉ネギ…20g トマト(ミディ)…1個 黒オリーブ…3個 ケイパー…5個 イタリアンパセリ…少々 塩…少々] ごはん…茶碗1杯 真鯛の刺身…5切れ 塩、レモン汁…各少々 B[温泉水99…100g 胡麻油 一番搾り…10g 塩…2つまみ]

  1. Aの材料をみじん切りにする(トマトは皮ごと)。
  2. ごはんは冷水で洗い、ザルにあげて水気を切る。
  3. 鯛の刺身に軽く塩とレモン汁をふる。
  4. ①を混ぜ合わせ、軽く塩をふる。
  5. 器に②のごはんを盛り、④の薬味をのせ、③の鯛を盛りつける。
  6. Bをペットボトル(もしくはシェイカーなど)に入れ、乳化して白くなるまで50回くらいふる。これを⑤に注ぎ入れる。

温泉水99(キューキュー)は鹿児島の垂水温泉の火山帯地下750mから湧きだす温泉水。硬度1.7の超軟水、pH 約9.9*の天然アルカリイオン水。浸透力が高く素材の風味をよく抽出し、抗酸化作用など多くの効果がある。女性誌や美容系SNSでの注目度も高い。
*参考:日本の水道水の多くはpH7前後の中性

エスオーシー(株) https: //www.onsensui.com/

(2023年春の号掲載)
 ※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。