特集100年先の未来

2026.02.19

100年後につなぐガストロノミー 「一子相伝なかむら」の中村元紀さんが見つめる京料理の未来


現在過去未来、食文化は常に変化しつづけます。京都「一子相伝なかむら」の中村元紀さんの若い感性、パリ「プレヴェル」のロマン・メデールシェフのプラントベースの視点で、100年先につなぐ想いを語ってもらいました。

中村元紀 京都「一子相伝なかむら」

店のスタイルは不変ではないが、京料理の文化を守っていきたい

来年で200周年を迎える京都「一子相伝なかむら」の7代目。料理人になる宿命を背負いながらも、「変わり者」「人と同じことをしたくない」「飽き性」という性格。精神的にトガっていた二十代を通過し、30歳になる今、いずれ父から継ぐ店や料理のことを広い視野で俯瞰しています。
「世界が平和でさえあれば、100年後にも食文化は絶えない。栄養補給して生きるための食糧と、楽しむ食に二極化するのではないでしょうか。正直、100年先の仮説は私には立てられませんが、自分が望む世界や料理を未来につないでいければいいと思います」
100年先に残る食材を考えると、一番に思い浮かんだのが味噌。奈良時代から食べられ、大豆タンパク豊富、発酵食品でもあります。
「仏教や文化の多くは、中国大陸や朝鮮半島から伝来しましたが、日本と中国や韓国の文化が同一かというと、そうではない。たとえば日本には唐辛子をきかせた料理、そんなにないですよね。このような違いを生んだのが、日本の気候風土だと思います」
食のスタイルは変化したとしても、テロワールに根ざした食材は途絶えぬはずと思考をめぐらしたのが、京都らしい白味噌の味噌汁を再構築した椀物の一品。今夏、研修で訪れた南仏で、多くのレストランが白味噌をさりげなく使っていたことが印象深く、素材使いの発想を拡げてみたといいます。白味噌と太白胡麻油のソテーがメイラード反応を産み、経験したことがないような深みやコクを生みだしています。

1996年、「一子相伝なかむら」の7代目として生まれる。同志社大学経済学部、台湾の大学に進学。『Forbes JAPAN』誌の2025年「30 UNDER 30」アワードを受賞。京都の料理人のもっとも若い世代の一人として今後の活躍が期待される。現在は父、元計さんのもとで「訓練中」。

味噌汁の椀

椀物に仕立てた「白味噌の味噌汁」。白味噌と太白胡麻油のソテーが生んだ超・精進素材の力強さ。

RECIPE

味噌汁の椀

材料/1人分(白味噌ごま豆腐はつくりやすい量)

太白胡麻油…20ml 白味噌…50g 昆布ダシ…450ml 本葛…70g 九条ネギ…適量 太白胡麻油…適量 あおさのり…適量 粉山椒…適量 一味唐辛子…適量 いり胡麻 白…適量 乾燥黒トリュフ…適量 鰹昆布合わせダシ…200ml 淡口醤油、塩…各適量

  1. フライパンを火にかけて太白胡麻油10mlをひき、白味噌を焼き色がつきはじめるまでソテーする。冷ましてから、太白胡麻油10mlと混ぜる。
  2. ①を昆布ダシで溶き、本葛を溶く。
  3. 火にかけ、ごま豆腐をつくる要領で練りあげる。流し缶に流して固める。
  4. 九条ネギはきざみ、流水にさらす。
  5. 太白胡麻油を120~130℃に熱し、あおさのりを数十秒揚げる。油を切り、上に粉山椒、一味唐辛子、いり胡麻 白をふる。
  6. 乾燥黒トリュフはミルサーで粉末状にする。
  7. 鰹昆布合わせダシを温め、淡口醤油、塩で味を調える。
  8. ③を適当な大きさに切りだして温め、椀に盛る。⑥をふりかけ、④をのせ、上に⑤を置く。⑦を張る。

白味噌を太白胡麻油でソテーし、昆布ダシで溶いて固めた白味噌ごま豆腐は、キノコのような風味に変化し、黒トリュフに負けない力強く複雑な風味があふれる。「良質な油脂は未来の料理を支える大切な調味料になる」(元紀さん)

子持ち羊羹

淡味、されど大満足。二色のねり胡麻と白餡が重なる上品なみずみずしさ。

黒ねり胡麻とソバ茶、白ねり胡麻をそれぞれ白餡と合わせ、上品な味わいの二色の羊羹に。黒白黒の3層に重ね合わせ、黒ごま羊羹にはこの羊羹の素材を視覚的に伝える「子」(黒ごま)をあしらう。羊羹はゼラチンと寒天で固め、和食の要である水を感じさせるみずみずしさと、スッとした歯切れのよさを併せもつテクスチャー。「黒ごまは香ばしさと軽い苦み、白ごまは繊細なようで余韻が長いので、二色にするのが味わいのおもしろさ。金木犀のシロップが合いますが、その一手で和菓子ではなく、アジアのお菓子になってしまう。ダメではないけれど、この一線は越えない塩梅を大切にしました」

レシピはウェブに
https://gomashiki.gomaabura.jp/content/uploads/2025/12/gomashiki158-web_nakamura_251208.pdf

SPOT

一子相伝なかむら

所在地:京都市中京区富小路御池下ル136
電話:075-221-5511
営業時間:12:00~12:30最終入店(水、土のみ)、17:00~18:30最終入店
休業日:不定
http://www.kyoryori-nakamura.com/
昼2万2000円、3万3000円、夜3万3000円、4万4000円。2011年からミシュラン三ツ星を維持する

(2025年冬の号掲載)
※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。