特集魚食の口福

2023.01.24

失敗しないムニエル。ごま油でゆっくりと焼く、恵比寿「アムール」後藤シェフのレストラン仕立ての一皿


プロの腕で究める美味な魚料理

大好きだけど、むずかしそうでつくったことはない、あの魚料理の名品。フレンチの上品なムニエル、やみつきの海鮮丼、ジューシーなアジフライを名店でおそわりました。「さかなの日」制定を記念して、編集部オススメ魚介のごまバタ鍋レシピもご紹介します。

魚味わう!太白胡麻油でゆっくりと焼くしっとり「ムニエル」

ちょっと憧れのフランス料理、ムニエル。繊細な魚の持ち味を生かす伝統的な調理法を、フランス料理「アムール」の後藤祐輔シェフとあらためておさらいしてみました。ムニエルのポイントは、粉をまぶして魚のおいしさを閉じ込め、ゆっくりと火を入れること。とてもシンプルなつくり方です。「本来はバターで焼きますが、焦げてしまうし、ちょっと重たいんです。僕がおすすめしたいのは、太白胡麻油とバターの両方使い。焼くのは太白胡麻油で、バターは最後に溶かすだけで香りをつけると、魚の繊細な風味がでて、食後感も軽い。太白胡麻油を吸った粉でおおわれているので、しっかり焼いても魚の水分が逃げず、しっとり焼きあがります」
家庭ではフライパンに残った太白胡麻油とバターを無駄なく活用して、プチトマトでさわやかなソースを。魚はタラやカジキマグロ、舌ビラメなどの白身魚、サーモン、サバ、ブリなどもおすすめです。

RECIPE

ムニエル

材料/1人分

【ムニエル】スズキ切り身…2枚(皮は好みで。皮つきは身がそりやすい) 塩…スズキの重量の0.8% 薄力粉…適量 太白胡麻油…大さじ1/2ぐらい 無塩バター…1.5cm角 【ソース】プチトマト(きざむ)…1個 ケイパー…小さじ1 塩…各適量 レモン…適量 パセリ(みじん切り)…適量 セルフィユ…適宜

  1. スズキの両面に塩をふって数分おき、ペーパータオルで表面の水分をふきとる。(下味ではなく、水分をほどよく抜くプロセス。くさみをとり、水分が抜ける分うまみが凝縮する)
  2. 薄力粉を茶こしでまんべんなくふり、余分な粉を落とす。
  3. フライパンは火にかけずに太白胡麻油を入れ、2をおく。強めの火にかける。(ノンスティック加工のフライパンはあらかじめ熱する必要なし。素材がいきなり強い熱にさらされず、ゆっくり火が入るので、身も縮みにくい)
  4. フライパンの温度が上がってオイルがジュクジュクしてきたら、中火にする。(一切触らないのがポイント。オイルがプチプチと泡をだす火加減にし、熱めのオイルに浸かりながらじんわり火が入っていくイメージ)
  5. 側面をみて、下半分が白く色が変わったら、裏返す。
  6. このまま触らず、ゆっくりと焼く。
  7. 側面の残り半分が白くなったら、もう一度裏返し、最後にバターを入れて溶かす。
  8. ペーパータオルの上に取りだし、表面のオイルをとる。(後藤シェフのひと手間の技。焼き調理に油は必要だが、余分なオイルはなしに)
  9. フライパンに残ったオイルにプチトマト、ケイパー、塩を入れて火にかける。トマトの角がくずれてきたら、レモンを絞り、パセリを加える。ムニエルとともに盛りつけ、セルフィユを添える。

レストラン仕立ての一皿。スズキのムニエル、カブとワサビの香りで

スズキのムニエルをレストランの一皿に。カブのソースとワサビオイルを流し、芽カブ、ラディッシュ、あやめ雪かぶ、ペンタス(食用花)を添える。カブのソースは太白胡麻油とカブでつくったもので、冷製でもなめらかなテクスチャーを保つのがバターのソースとはちがう点。ワサビオイルは太白胡麻油、ねりワサビ(太白胡麻油の20%量目安)、着色用の春菊のピュレをミキサーにかけ、ひと晩かけて濾過。

カブのソースと、ワサビのオイル。刺身にワサビのように、ムニエルにワサビオイルを合わせるイメージ。ワサビの辛みはなく、清涼感のある香りだけが抽出される。
魚や海の問題を学びたくて、料理人のチーム Chefs for the Blue に加わり活動しています。今日使ったスズキは、サステナブル漁法の第一人者、千葉の大傳丸さんから入荷したもの。料理を通して、一人でも多くの方に日本の魚を守るメッセージを伝えるのが使命だと思っています。

SPOT

Amour

所在地:東京都渋谷区広尾1-6-13
電話:03-3409-1331
営業時間:金土日のみ12:00〜15:00(13:00L.O.)、18:00 〜22:00(19:00L.O.)
休業日:水、他不定休あり
https://www.amourtokyojapan.com/
ランチ1万1000円、1万6500円、ディナー1万9800円、2万6400円。後藤祐輔シェフはクラシルのYouTube「シェフのレシピ帖」でも人気

(2022年冬の号掲載)
 ※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。