特集進化する太白胡麻油
2023.10.19
太白胡麻油の真のキャラクターはこれだ!日大学生のブラインドテイスティングから見えてきた5つの個性
日大学生のブラインドテイスティング
無垢な舌が浮き彫りにする太白胡麻油のキャラクター
太白胡麻油は一体どのような油なのか⁈ この油の特性とは⁈ 食のコンサルタント、やまけんが日本大学の講義で毎年行なう「油のブラインドテイスティング」の結果を「ごま油の四季」編集部がヒモ解き、分析した本企画。85人の学生の舌の感性から、太白胡麻油の真のキャラクターをつかみます。
ブラインドテイスティングの方法
⚫太白胡麻油、菜種油(コールドプレス)、オリーブオイル(サルデーニャ産・コールドプレス)の3種類のブラインドテイスティングを2023年6月、学生85人により実施
※参考値として自宅で使っているオイルも同時にテイスティング)。3種類を試飲してそれぞれ何の油脂かを回答し、下記も同時に評価した。
⚫ 非加熱でテイスティングした際の「見た目」「香り」「味わい」の評価
⚫ 野菜(青菜やキャベツなど)を炒めて加熱した後の料理適性の評価
⚫ 総合評価
● Character1:太白胡麻油、圧倒的な高評価
他の油脂に比べて個性がない。それが太白胡麻油のキャラ
大半の学生にとって太白胡麻油は既知でなく、未体験の油脂であったが、見た目、香り、味わいによる【総合評価】、野菜を炒めた【料理適性】ともに、他の油脂に対して大きくポイントを開いて評価が高い。このポイント差の理由は、菜種油やオリーブオイルは味や香りに明らかな特徴があり、使い方を選ばなければならないと学生たちが感じたことが大きいと思われる。その点で太白胡麻油はオールマイティだと捉えられたようだ。
● Character2:見事、太白胡麻油を当てた学生は3人!
「毎年何人が当てるのか楽しみ」(やまけんさん)
全85人の学生中、ブラインドテイスティングで太白胡麻油を当てたのは3人。
そのうち2人は実家で太白胡麻油を使っているのをみたことがあり、もう1人はアルバイト先の調理場担当者から助言をもらったという。
ちなみに、太白胡麻油を別の油と回答したのは、下記の通り。米油(回答24)、大豆油(17)、サラダ油(12)、菜種油(10)、ヒマワリ油(5)、キャノーラ油(4)、アマニ油(3)、綿実油(2)、コーン油、紅花油、エゴマ油、ココナッツオイル、オリーブオイル(以上1)。これほど多くの種類の油脂が学生たちに認識されていることに驚かされ、あらためて油脂の使い分けを伝える重要性を感じた。
● Character3:似ているようで、全然違う。太白胡麻油と菜種油
太白胡麻油は無味無臭の水のよう、菜種油は香ばしい主張
透明な植物性油脂という括りでまとめられがちな太白胡麻油と他の油脂。しかしながら、ブラインドテイスティングをすることにより、香りも味もまったく違うものだということを実感できる。評価シートのコメントをみると、太白胡麻油は油自体が無味無臭で、粘性もほぼなく、多くの学生にとってこの特徴は使いやすく、ヘルシー感にも結びつくようだ。対して、菜種油は香りや味わいのイメージとして「トウモロコシ」「アスパラガス」「フルーティ」「草」「穀物」「土」……といった無数の表現が用いられ、料理に香ばしさをだしたい時に向いているというコメントにその特徴が集約されている。良し悪しではなく、個性の違いを認識することが大切なのだ。
【参考】5種類の植物性油脂でモヤシを炒め、その味わいの平均値に対して、太白胡麻油、キャノーラ油(菜種油の一種)がどのように呈味するかを示したチャート(データ計測・解析/味香り戦略研究所)。今回のブラインドテイスティングの評価を裏づける呈味であることがわかる。
● Character4:「この油、いいな」ポジティブなキーワード
学生たち、ナイスなことをいってくれるじゃないですか!
学生たちが太白胡麻油を評したキャラクターをピックアップすると上記のようになる。本誌でも日頃から使うキーワードが多くみられ、太白胡麻油を食べ慣れない学生の味覚でも、感じるものは同じだということがわかる。一部、味や香りに特徴がないことをデメリットと捉えるコメントもみられた。
● Character5:ブラインドテイスティングのコメントから油脂に対する価値観がみえてくる
学生にも浸透している「素材を生かす」重要性
世の中の食全般が素材重視の志向でもあり、学生たちのコメントでは、油脂に関しても「調理する素材を生かすのがよい」という評価が多くみられた。その結果、のようなキーワードで評される太白胡麻油は、高い評価を得たといえる。
今回ブラインドテイスティングをした菜種油は香ばしさがあり、オリーブオイルは苦味があるため、合わせる素材との相性を知らなければならない。それに対して、太白胡麻油は味や香りがないため、料理する時に扱いやすい印象を受けるようだ。見た目の透明感、粘りがないテクスチャー、炒め調理をした時に油っぽさを感じにくいことも、油脂としての高評価につながっている。
COMMENT
ブラインドテイスティングで油脂の特性をつかむ
日本大学の生物資源科学部でフードコーディネート実習を担当し、毎年「ブラインドテイスティング」をしています。取りあげる食品は、卵、油脂、醤油、酢、野菜、肉など。「油脂」の回は今年も6月に実施し、太白胡麻油、菜種油、オリーブオイルをブラインドでテイスティングし、授業で答え合わせをしました。答え合わせの時には各油脂の製造法なども講義し、油脂に対する見識を正しく持つことが目的です。油脂の特性をつかむためにブラインドテイスティングは最適な方法です。プロの料理人にも強く推奨したいですね。
1971年、愛媛生まれ。やまけんの愛称で知られ、幅広く活躍する農畜産物コンサルタント、ジャーナリスト。 https://www.goodtables.jp/
(2023年秋の号掲載)
※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。