特集フードテックとおいしい、やさしい未来
2022.10.25
【マルホンフードテック1】伝統の圧搾製法とフードテックが融合する、マルホンのごま油づくり最前線をご紹介
マルホン胡麻油のフードテック
マルホン胡麻油は今年で創業297年。江戸時代の享保年間に愛知県三河で創業し、大正時代から本格的にごま油の製造をはじめました。おなじみの太白胡麻油や太香胡麻油*も大正時代からみなさまにお届けしています。マルホン胡麻油の誇りは、創業の頃から続ける「圧搾(あっさく)製法」。ごまに圧力を加えるだけで搾油するこの製法こそが、最上のごま油を生むと確信しています。昨今の世界、そして日本のフードテックの進化は、マルホン胡麻油にとっても大切なテーマ。変わらぬ圧搾製法と、フードテックによる未来へのステップアップが同時進行する現状をお届けします。
*2009年までは旧名称の「極上胡麻油」。
工場は楽しいぞ!マルホン胡麻油の工場では新・旧のテクノロジーを大切にしています
マルホン胡麻油のごま油製造の技術は「圧搾製法」。ごまに圧力をかけるだけで油を搾るというが、一体どのような製法なのだろうか。
工場で稼働しているのは、下の写真のような搾油機だ。筒の中でスクリュー状の軸が回転し、この筒の中にごまを通し、これらの圧力でごまをつぶしながら油を搾る構造だ。自然の圧力だけしか負荷をかけないので、一度では搾りきれない。そこでもう一度同様に圧搾し、計2回油を搾っている。
「2回搾っても、まだ十数パーセントの油が搾りきれずごまに残ります。歩留まりはよくありませんが、これを搾りきるための化学溶剤* は当社では一切使用しません」
と竹本油脂(株)の生産部部長・宮崎健一さん。一般的に食用油の製造には化学溶剤による抽出法を用いることが多いが、これをマルホン胡麻油は頑なに取り入れず、圧搾製法のみのこだわりを貫いている。
なぜなら、圧搾製法こそが、ごま本来のうまみや香りを最大限に引きだすことができ、雑味のない、クリアな風味と香りのごま油を得ることができると考えるからだ。最高のおいしさ、ただこの一点を曲げないために、圧搾製法はマルホン胡麻油に欠かせない技術なのだ。
圧搾製法の搾油機は、江戸時代までさかのぼり、当時と機械の原理としては変わらないもの。コアな技術ほど、アナログは強しだ。
*化学溶剤(ノルマルヘキサン)にごまの油脂分を付着させ、ほぼ100パーセントの油脂を搾油する「抽出法」と呼ばれる方法。
地球環境のために工場は進化しています
4棟ある工場は設備をアップデートし、燃料の都市ガス化、LED化などを進めている。搾油後の搾りかすは養鶏などの飼料や肥料として100%アップサイクル、濾過工程で発生する廃棄物は、セメント製造の補助剤として再利用している。
照明のLED化+自然の採光
重油の都市ガス化
包装資材にもさまざまな工夫
工場で働く3台の仲間のロボットたち
工場では、ケース詰めや荷だしの工程でロボットも稼働、3台のロボットが日夜活躍している。人間とロボットが協働する風景がある。
ピッキングロボット
パレタイズロボット
伝統的な製法が生みだす最高品質のごま油
「圧搾製法」のみならず、マルホン胡麻油の工場では「焙煎」や「濾過」の工程でも伝統的な製法を大切にしている。とくに国内最大級の焙煎機は、熱をゆっくりと伝え、じっくりていねいにごまの芯まで火を入れることができ、マルホン胡麻油の風味のよさにもつながっている。
焙煎工程
濾過工程
守るべき伝統的な製法と、進化する工場環境の二極化
工場では毎日約70tのごま油を製造しています。搾油の工程は圧搾製法にこだわることはいうまでもなく、原料ごまや搾油したオイルのブレンドでは、人の眼や鼻、舌の官能も大切にしています。ごまは農作物ですから、収穫年や産地によってできばえは変わります。それを見極めるのは、長年の経験に裏打ちされた人間の感覚です。
一方で、2019年に稼働をはじめたボトル充填の新工場は、衛生的な観点から非接触と省人化、かつラベリング工程などで人的ミスを最小限に抑えるために、ボトリングから梱包まで最新鋭の自動化ラインを備えています。工場は2012年にFSSC 22000*も取得し、お客様に安全安心なマルホン胡麻油をお届けする環境を配備しました。伝統技術と人の手と、そしてテクノロジーの二極化により、マルホン胡麻油はさらに進化していきます。
*国際規格の食品安全マネジメントシステム
(2022年秋の号掲載)
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