特集進化形のやすらぎスイーツ

2022.01.18

フランス直送の最新情報!黒ごまのケーキやショコラなど、今パリで人気のごまスイーツはコレ!


PARISからお届け。SESAMEセンセーション

ごまのクールなスイーツが次々と目に飛び込んでくるパリの街。とくに黒ごまのノワールなケーキやショコラが増殖中?!フランスからセザムなスイーツの最新事情をお届けします。
(texte&photo/Akiko Ida)

香り立つフレーバーとコク、白黒のビジュアル…フランス人を虜にするセザム

フランスではここ最近、パティシエやショコラティエ、料理人がごまに注目しはじめ、店頭のショーケースやSNS上に、ひと際目を引く黒ごまのお菓子やパンが登場するようになった。
スイーツ界の先端を行く「ピエール・エルメ」は、2021年の夏のコレクションで、黒ごまを使ったマカロンやモチアイスクリームなどを発表し、見慣れぬシックな色合いの世界観と、はじめての味わいがパリっ子たちを夢中にさせた。日本を何度も訪れ、日本の食材をこよなく愛するエルメさんは、彼のクリエーションを通して黒ごまの魅力を発信したかったそうだ。
いち早くパンやお菓子に黒ごまを取り入れてきた「ユートピー」は、パリでも注目度の高いブーランジュリー・パティスリー。オーナーのセバスチャン・ブルーノさんは「黒色ってとにかくクール。ねり胡麻も使っているけれど、色だけでなく、香りもとてもいい。太白胡麻油ももっと使いたいけれど、フランスではまだ高級食材なんだよね」と語る。
たしかにフランスではごま油は高価。しかしごま好きなシェフたちは、粒ごまを使い、焙煎の度合いやすり加減、使う量によって、風味や食感、色合いにバリエーションが生まれることをしっかり楽しんでいる。ごまはまだフランスの食文化のなかでは個性的な存在だが、多くのパティシエは柑橘類を組み合わせて用い、黒ごまの香ばしさやコクと、柑橘類のさわやかな酸味をマリアージュさせている。
シェフたちがごまの魅力にとりつかれる理由を、パティシエのニコラ・ベルナルデさんの一言が語っている。
「ごまのすごさは、こんな小さな一粒のなかにとてもパワフルな香りを秘めていることだ」
日本では身近な食材でも、ここフランスでごまのお菓子やパンを食べると、新たな魅力に気づかされることも多い。ごまは今後ますます魅力を発揮していくだろう。

PIERRE HERMÉ

黒ごまが魅了した2021夏のピエール・エルメ

マカロン・アンフィニマン・セザム・ノワール(上)の2色のマカロン生地の間にはさまれたのは、繊細な黒ごまガナッシュとサクサクの黒ごまディスク。黒ごまの食感と香りのちがいをだしきった、その名の通り「限りなく黒ごまなマカロン」。2021年夏にピエール・エルメが発表したコレクションは「ジャポニスム」と名づけられ、黒ごま、柚子、ワサビ、抹茶、桜の花などを使ったスイーツが期間限定で発売された。ほかにも塩バターキャラメルのアイスクリームに黒ごまのヌガティーヌをトッピングしたグラス・ウーヴルトワ(下)や、黒ごまのマカロンをトッピングしたミルクフラッペなど、黒ごまフィーバー。

ピエール・エルメ
https://www.pierreherme.com/

COLOROVA

上品さをたたえたノワールのケーキたち

週末ともなれば行列のできるおしゃれなサロン・ド・テでも、黒ごま人気。ポール・セザム(左)は、サクサクの黒ごまサブレにレモンクリーム、黒ごまクリーム、粒黒ごま入りヌガティーヌ、サブレのディスクに支えられたレモン・コンフィ、それをやさしく包むレモンムース、そして黒ごまグラサージュという凝った構成。画家のポール・セザンヌに掛けたネーミングだけあり、各パーツの異なるテクスチャーと味覚が、画家のパレット上の色彩のように口のなかで見事に共演する。ダーク・フラン(右)は、とことん黒ごま感をだした濃厚な仕上がり。なめらかなフラン生地に、黒すりごまの食感が快い。

コロロヴァ
https://www.colorova-brunch.com/

ARNAUD LARHER

今秋、黒ごまのマカロンも新登場

この秋の新作マカロン・セザム・ノワール(上)は、黒ごまガナッシュにアーモンドのプラリネが香ばしさを添える一品。ボンボンショコラでは、10年ほど前に日本の伊勢丹の依頼でつくりはじめた白ごまプラリネのセザム・ウーヴルトワ(「開け、ごま」の意味)(下・右)のほか、2年前には黒ごまプラリネのプラリネ・セザム・ノワール(下・左)も仲間入り。蕎麦の栽培で有名なブルターニュ地方出身のラエールさんにとって、ごまは蕎麦と同じように焙煎してフレーバーを楽しめる身近な素材だという。

アルノー・ラエール
https://www.arnaudlarher.com/

CHOCOLAT AU CARRÉ

ショコラで味わう濃厚なごま感

キューブ状のボンボン・ショコラで有名なショコラティエ、ジャン=ピエール・ロドリゲスさんは大のごま好き。粒ごまを自分で焙煎して香りを引きだしてから使っている。甘さ控えめのプラリネ・セザム(下)は、羊羹を思わせるねっとりした質感で、ふつうのボンボン・ショコラより厚みがあるキューブ形だからこそ、濃厚なごまの風味を感じることができる。プラリネ・ア・タルティネ・セザム(上)は、白ごまと黒ごまを約24%ずつ贅沢に配合し、ミルクチョコレートやバターと合わせたまろやかなペースト。店舗では不定期で週末にシュー・セザム・シトロン・ユズも販売している。

ショコ・オ・キャレ
https://choco-au-carre.fr/

Utopie

ごま好きなオーナーシェフは、思いっきりごま贔屓

店頭にはごまのケーキやパンが常時7品ほど。フランス人はエクレア好きで知られるが、エクレア・オ・セザムも同店の定番の一品。焼き菓子やパンには黒色を表現するために竹炭を併用するが、竹炭には風味がないので、マドレーヌなどのお菓子には黒ごまでフレーバーをだしている。とにかく黒ごまを使ったビジュアルがカッコよく、同店を訪れればだれもが黒ごまのファンになってしまうはず。黒ごまの味わいやフレーバーのバランスもすばらしい。

エクレア・オ・セザムはホワイトチョコレートのガナッシュに黒ごまを合わせている。黒ごまをしっかり感じつつも食べやすい仕上がり。
セザム・ノワール・シトロン・ヴェール。ザクザク食感の粒黒ごま入りサブレの上に、ライムのコンフィを抱いた黒ごまムースが鎮座する。大胆な上下の食感のギャップに、ライムの酸味の驚きが加わる意外性のある一品。
写真の奥から、マドレーヌ、フルール・アマンド・セザム・ミルティーユ、ルーレ・セザム。フルール・アマンド・セザム・ミルティーユは、黒ごま入りとプレーンのペストリー生地の層に、ブルーベリーとアーモンドプラリネが盛り込まれたリッチな味わい。

ユートピー
https://boulangerieutopie.com/

NICOLAS BERNARDÉ

白ごま&ワサビ、アーモンドで和仏のフュージョン

大好きな日本に10回以上足を運んだというベルナルデさん。ごまプラリネのボンボン・ショコラを販売していたこともあるが、現在はアマンド・グリエ・セザム&ワサビが人気。香ばしくローストしたアーモンドに、粉ワサビで味つけした白ごまをまぶしている。ごまとワサビで日本テイストをだしつつ、アーモンドの食感にあえてごまの粒々感を加えたかったという。おやつにも白ワインにも合いそうな一品。

ニコラ・ベルナルデ
https://nicolas-bernarde.com/

À LA MÈRE DE FAMILLE

アーモンド、ヘーゼルナッツ、ごまの3種のプラリネが相性抜群

老舗のショコラトリーでも、ごまアイテムは人気。トゥカン・セザムは、ごまとアーモンド、ヘーゼルナッツのプラリネを合わせ、表面には白黒2色のごまがびっしり。プラリネにもごまの食感が残っているので、全体的にごまの主張満点。

ア・ラ・メール・ドゥ・ファミーユ
https://www.lameredefamille.com/

LE CHOCOLAT ALAIN DUCASSE

小粋にバーをかじるビターなセザム・ノワール

定番シリーズのバータイプのショコラに、黒ごまもラインナップ。バール・ア・クロッケ・セザム・ノワールは、黒ごまプラリネの食感と香りをアーモンド・プラリネがあと押しし、リ・スフレのサクサク感が心地いい。4つの異なる産地のカカオをブレンドしたブラックチョコレートのビター加減が絶妙で、甘さ控えめの大人のためのチョコレートバー。小箱入りのデザインもシックで、フランス人の男性ならポケットに忍ばせて一気に食べてしまいそう。

ル・ショコラ・アラン・デュカス
https://www.lechocolat-alainducasse.com/

(2021年冬の号掲載)
 ※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。