特集進化する太白胡麻油

2023.09.28

イタリアン×ごま油の大きな可能性。京都「チェンチ」の坂本シェフが魅せる、太白胡麻油の名脇役使い


素材を生かす料理観。料理人にとってこのキーワードは不可欠ですが、「チェンチ」の坂本健シェフの素材を選び、織り重ねる表現はひと際繊細。イタリア料理を軸に、生まれ育った京都、日本国内、そして世界の素材を探究しながら、一皿に数多くの素材を緻密に積み重ねています。

イタリア料理といえば、オリーブオイル。テロワールを考えれば、この組み合わせは当たり前のこと。でも、地元京都や国産の素材を生かすチェンチの坂本健シェフにとっては、この組み合わせはもはや正解ではなくなっているそうです。「正直いうと、オリーブオイルよりも、太白胡麻油のほうが使う量は増えています。さまざまな調理に使えて、ふくよかなのが太白胡麻油。一方、オリーブオイルは存在感の強い油なので、仕上げにたらして際立たせます」
坂本シェフは太白胡麻油を「名脇役」といいます。加熱調理の媒介となる油脂の力をもち、しかも素材の味はマスキングせず、色もきれいにだすことができるのが太白胡麻油。数多くの素材を生かそうとするほどに、太白胡麻油の出番は増えるのです。

胡瓜、バジル、ワカタイ、マリーゴールド、ほっき貝

冷たい太白胡麻油でつくる冴えたグリーンペースト。3種のグリーンのハーブが重なる苦味の膨らみ、太白胡麻油にしかできない表現。

スイートバジル、ワカタイ(ペルーで使うハーブ)、マリーゴールドをそれぞれお湯に通し、氷水にとって色止めして水分を絞る。それぞれブレンダーが回る最少量の太白胡麻油とともに撹拌してペースト状にする(真空パックで冷凍保存)。3種のペーストをブレンダーで合わせてグリーンペーストをつくる。ニンニクオイル、鶏ダシ(鶏節と昆布でとる)、貝のヒモのダシでベースをつくり、ゆでたフェットチーネ、細切りにしたキュウリ(0.5%量の塩をふり、少し柔らかくする)を加えて水分を詰め、途中で火入れしたホッキ貝を加え、水分が少なくなったらグリーンペーストを加えてつなぐ。レモンバジル、パッションバジルをあしらう。

牡蠣、じゃがいも、つるむらさき、無農薬レモン

太白胡麻油のコクと牡蠣のうまみ。オイルが最高の調味料。
低温でコンフィした太白胡麻油には、牡蠣の味わいやニンニクの香ばしさが移り、何ともいえないうまみがあふれる。

ニンニクのスライスと太白胡麻油を火にかけてニンニクが少し色づくまで温度を上げる。火をとめてしばらく冷ましてから、牡蠣を加えて太白胡麻油をヒタヒタに注ぎ、80℃のスチームコンベクションオーブンで30分加熱してコンフィにする。スキレットに牡蠣のコンフィのオイル、蒸して皮をむいたジャガイモを入れて火にかける。ジャガイモが揚げたような状態になったら、ツルムラサキを加え、少し火が入ったら薄くイチョウ切りにしたレモンを加え、牡蠣のコンフィをのせる。仕上げに粉末の完熟山椒をふり、熱々を供する。

アマゾンカカオシフォンケーキ

アマゾンカカオの酸味あふれるフルーツ感

アマゾンカカオの現地視察もした坂本シェフの想いが詰まった、アマゾンカカオ尽くしのドルチェ。生地に太白胡麻油を使ったカカオのシフォンケーキは、キメが細かくふわふわ。カカオのクーベルチュールのホイップクリームがたっぷりで、アクセントにハレヤ(ホワイトカカオ・マカンボのジャム)とカカオニブがひそんでいる。

チェンチ
坂本健

1975年、京都生まれ。「イル・パッパラルド」「イル・ギオットーネ」で笹島保弘シェフに師事し、イル・ギオットーネ本店で料理長を9年務める。2014年に「チェンチ」を開店。

SPOT

cenci

所在地:京都市左京区聖護院円頓美町44-7
電話:075-708-5307
営業時間:12:00~15:00(12:30L.O.)、18:00~21:30(18:30L.O.)
休業日:月(不定休あり)
https://cenci-kyoto.com/
ランチ1万2100円、2万1780円、ディナー2万1780円。アマゾンカカオシフォンケーキはオンラインショップや、姉妹店「manina」で販売

(2023年秋の号掲載)
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