天ぷらを食べに
2021.12.16
からさわ(東京・西麻布)唐澤 隆
日本料理の職人の技術と心を天ぷらに
「今でも日本料理の職人という気持ちでやっています」と語るのは、「からさわ」の主人、唐澤隆さん。
唐澤さんはかつてのホテルオークラ「和食堂 山里」で、日本料理と天ぷらのカウンターを守って33年。西麻布の静かな路地に、自身の店を構えて16年余り。半世紀にわたり技術を磨いて、現在に至る。自らが腕をふるうホテル仕込みの天然ふぐや鱧、すっぽんなど、天ぷらだけでなく料理の充実ぶりでもその名を知られている。
「お客さまに自信をもって提供するために、どんなものでも自分で一から準備したいんですね」
と唐澤さん。素材へのこだわりはもちろん、仕入れ後は揚げるタイミングに合わせておいしさがピークになるよう、素材によっては数時間から数日ねかせ、「うまみを整えてから」揚げている。
揚げ油はホテルオークラ時代からなじみが深いという太白胡麻油を、大豆油と同割でブレンドして用いる。唐澤さんの天ぷらには欠かせない相棒だ。
「太白胡麻油は、何を揚げてもへこたれない強さと、素材の持ち味を生かす油のおいしさがあるんです。揚げるごとにうまみが増すような感覚があって、私はこれ以上の油を他に知りません」
この油を使い、たとえば、あわびはレアに揚げた後包丁を入れて、ジューシーでほんのり温かい刺身のような一品に仕立てる。反対になすは、丸のまま高温で揚げて、蒸し物のようなみずみずしさに。
秋から春までの同店の目玉といえば、なんといっても、天然ふぐだ。天ぷらはもちろんのこと、刺身や煮こごり、鍋にひれ酒と、唐澤さんの真骨頂ともいえる味わいを、余すところなく堪能できる。シャンパンの品ぞろえも充実させ、とくに白子の天ぷらとのペアリングは最高という。
特別なことはできないんですよ、と謙遜するが、店内で使っている器や衣鉢はすべて自身でひとつずつ手づくりしたもの。休日には旬の野草を採りに郊外へでかけることもしばしば。長年にわたり顧客を魅了しつづけるのは、細部まで手を掛け、探求することを惜しまない情熱の賜に他ならない。
SPOT
からさわ
所在地:東京都港区西麻布4-15-18 高木ビル1F
電話:03-6418-7878
営業時間:11:30~14:00(13:30L.O.)、17:30~21:30(21:00L.O.)
休業日:水休(不定休あり)
東京メトロ日比谷線広尾駅◎徒歩12分
昼はかきあげ天丼2800円、特選天婦羅コース7500円など。夜のコースは9500円~、
料理が充実した季節のおまかせコースは2万2000円~(要予約)。
(2021年秋の号掲載)
※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。