天ぷらを食べに

2025.07.22

鶴八(熊本)



食材の宝庫、熊本で他のどこにもない天ぷらを

熊本市内の繁華な新市街にある「鶴八」。現店主の新原央敏さんは、創業者の祖母、父のあとを継ぎ、3代目として揚げ鍋の前に立つ。父から数年学んだ以外は独学だというものの、その腕は年々上がり、いまや予約がとりにくい名店になりつつある。
同店を訪れて気づかされるのは、熊本の食の豊かさだ。仕入れる食材は大半が熊本県産で、衣の小麦粉や卵、水、天ぷらに添える塩や山椒にいたるまでが同県産。揚げ油のブレンドも興味深く、綿実油と太白胡麻油を合わせ、そこに地元の未精製の玉締めごま油を合わせている。「父の代までは綿実油のみで揚げていたので、お客様の鶴八の天ぷらのイメージは綿実。ここは私の代でも逸脱しないように、熱に強い太白胡麻油を2割ほど合わせ、さらに地元のごま油を0.5割ほど入れています。ナッティというか油の余韻が心地よくて、かつ素材の味がしっかり感じとれると思っています」と新原さん。このブレンドの油をまとった天ぷらは、他のどの店にもない鶴八唯一の味わいを生んでいるのだ。

熊本の赤ナスは2種類の揚げ方で供する。アジ節をふりかけた一品には醤油をひとたらし。うまみが繊細。
夏にとくにおすすめするのは、カラシをひと筋はさみこんで揚げたもの。熱で辛みがほどよく飛び、赤ナスの水分と混じりあい清々しい。
熊本は天草や有明海など海の食材も豊か。天草の岩牡蠣はヒダの部分は衣をカリッと小気味よく揚げ、内側の濃厚な味わいと対比をだす。
有明海のキスは4日ほどねかせたもの。衣は全卵1個と冷水600mlを泡立て器でふわふわに混ぜ、マイナス25℃で丸一日冷やした県産薄力粉を加える。サクサクとキメ細かい衣の食感。

SPOT

鶴八

所在地:熊本市中央区新市街1-2
電話:096-352-7708
営業時間:17:00~22:00
休業日:日
Instagram@tempura.tsuruhachi
本日の天ぷらコース1万2100円のほか単品料理もあり

(2025年夏の号掲載)
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