特集薬味、ごま偏愛

2022.06.14

新鮮な魚とごまから生まれる万能調味料「ごまだし」。大分の漁村から届く、愛情たっぷり健康グルメ


大分・佐伯の漁村から。愛情たっぷり魚とごま

魚とごまをすり合わせてつくる「ごまだし」。大分県の漁村で生まれたこの郷土食が、いま全国区で知られる万能調味料になりつつあります。ごまが香り立つそのおいしさの魅力をお届けします。

漁港として知られる大分県佐伯市の市街から、車で南東に30分行くと、ごまだしを製造する鶴見の漁村がある。リアス式の海岸線に沿って道路がくねくねと走り、漁港や家々が点在する風景。このエリアは豊後水道の水産資源に恵まれている。

大きなすり鉢で白ごまをゴリゴリ、焼きほぐした魚をゴリゴリ。漁港の町として知られる大分県佐伯(さいき)市には、「ごまだし」と呼ばれる保存食があります。数十年前までは漁村の母から娘へと伝えられる家庭のレシピでしたが、最近ではすっかりつくられる機会も減ってしまった郷土の味。このごまだしを復活させたのが、小さな漁村・鶴見港にある「漁村女性グループめばる」です。
「ごまだしはとてもおいしいんですよ。家のすぐ前は海、ごまは私が子どもの頃は庭に畑がありました。どちらも身近で、健康的な素材です」
と、リーダーの桑原政子さん。大量に魚が獲れたときにまとめて仕込み、常温で保管しておく保存食なので、ごまを薬味素材としてふんだんに使った先人の知恵はさすが。ごまは魚くささをやわらげ、かつ香ばしさを添えています。ごまの抗酸化力はおいしさをキープするのにも、ひと役買っているかもしれません。
鶴見から発信するごまだしの味わいは、いまや全国に知られるようになりました。
「ごまだしをみなさんが食べてくれれば、魚食が増え、地域の魚価も向上し、地域振興につながります」
食べ方も和洋のジャンルを問わずアレンジがきき、万能調味料として使えます。一度食べたら、うまみと香りあふれるごまだしのファンになるのはまちがいなしです。

年中水揚げするエソが、郷土食「ごまだし」の材料。ほかにアジやタイでもつくる。

目の前に広がる海。豊富に獲れる新鮮な魚と香り高いごま

港にある工房で、ごまだしを製造中。焼き魚、すりたてのごま、醤油の甘く香ばしい香りが立ちこめています。

魚とごまはおよそ2対1の割合。マルホンのいり胡麻 白を製造直前にすり、香り豊かに。
エソ、アジ、タイの3種類のごまだし。白身魚ならではの上品な味わいのエソ、魚の風味が強いアジ、より繊細なタイ。200g入り。

めばるリーダー桑原政子さんにおそわる、家庭でつくる「ごまだし」

ごまだしは大量の水揚げがあったときにまとめてつくり、繁忙期にうどんにのせて簡単に食べていた保存食。魚とごまの栄養価抜群で、うまみもたっぷり。

漁師の妻の知恵と愛情が詰まってます

RECIPE

ごまだし

材料/つくりやすい量

アジ、タイなど…正味500g いり胡麻 白…250g A[淡口醤油…325ml 濃口醤油…175ml みりん…225ml 砂糖…11g]
*魚は頭を落として内臓や血合いを取りのぞき、三枚におろして焼く。皮をはずして身をほぐし、小骨を取りのぞいておく。

  1. すり鉢にいり胡麻 白を入れ、すりこぎでする。半ずり程度で、ごまから油がでてくる前に止めるのが目安。
  2. ほぐした魚を加え、全体が混ざり合う程度にすり合わせる。
  3. Aの調味料を加え、さらによくすり混ぜる。本来、家庭では調味料は醤油のみでつくっていたそう。
  4. すり混ぜながら、残っている小骨をみつけては取りのぞく。醤油が混ざるにつれて白い小骨がみえやすくなるので、注意深く、ひたすら根気よく。
    (手順は簡単でも魚の皮や小骨を入念に取るのに手間がかかる)
  5. 小骨を取り終わる頃には、魚とごまが混ざっていい状態に。これでできあがり。

◎冷蔵庫で1週間ほど保存できる。

万能調味料の「ごまだし」とごま油があれば、無敵のおいしいレシピ

ごまだしのあとを引くおいしさは、幅広い料理にアレンジ可能。新鮮な魚とごまが生みだす、うまみにあふれる万能調味料です。

ごまだしうどん

どんぶりにうどんを入れてお湯を注ぎ、かまぼこやネギの具とごまだしをのせるだけ。ごまだしは1人分で大さじ2が目安。お好みでかけ旨ごま油 マイルドをかけると、ごまだしのうまみに香ばしさが加わり、さらにおいしさが増す。夏はごまだしを同量の水で割ると、そうめん用のつゆにもなる。

ごまだしの原点の一品

ごまだし卵かけごはん

いつもの卵かけごはんに、ごまだしを大さじ1ほどのせ、かけ旨ごま油 マイルドをかけると、うまみ倍増!さらに納豆トッピングもうまい。

和風チャーハン

ごまだしとごま油のダブル使いで、香ばしさ倍増。炒め調理にはアジのごまだしがイチオシ。

RECIPE

和風チャーハン

材料/ごはん2杯分

圧搾純正胡麻油 濃口…大さじ1 ちりめんじゃこ…30g 長ネギみじん切り…1/4本分 ごまだし…大さじ1 ごはん…茶碗2杯 カリカリ小梅…10個 塩…少々

  1. フライパンに圧搾純正 濃口を入れて熱し、ちりめんじゃこをカリッとするまで炒める。
  2. 長ネギも加えて炒め、しんなりしたら、ごまだし、ごはんを加えて炒め合わせる。
  3. きざんだ小梅を加え、塩で味を調える。

ナムル

野菜とごまだし、ごま油を和えれば、うまみたっぷり、香りもよく、味が決まる。

RECIPE

ナムル

材料/つくりやすい量

ホウレン草…1束 モヤシ…1袋 ニンジン…1本 A[ごまだし、かけ旨ごま油 一番搾り…各大さじ1と1/2] ごま油屋のラー油…適量

  1. ホウレン草はゆでて食べやすく切る。モヤシはさっとゆでる。ニンジンはピーラーで薄切りにする。
  2. それぞれをAと和え、ニンジンのナムルにはごま油屋のラー油も加える。
「魚をどんどん食べてね」ごまだしを製造するスタッフのみなさん。中央は顧問の桑原政子さん、左端は代表取締役の小谷晃文さん。6月からは新たに魚種を増やし、「ごまだし+(プラス)」シリーズも発売。愛情込めて、全国にごまだしを届けます!

SPOT

漁村女性グループめばる

所在地:大分県佐伯市鶴見沖松浦1384-2
電話:0972-33-0274
facebook@gomadasi
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(2022年夏の号掲載) 
※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。