特集醸しだすUMAMI

2024.10.03

プラントベースフードを語り合う、ごま油の竹本油脂、大豆の不二製油、京都「瓢亭」髙橋義弘さんの三者対談


ごまと大豆の大作戦!もっともっとプラントベースをおいしくしたい

身近な食の選択肢のひとつになりつつある、プラントベースフード。植物性の食品だけで満足度が高い料理をつくるためには、ごまと大豆のコンビネーションが力を発揮します。ごま油一筋の竹本油脂から竹本信二郎専務、大豆のスペシャリスト不二製油から大森達司社長、そしてごまと大豆のおいしさのつなぎ役として瓢亭の髙橋義弘さんの3名によるごまと大豆のプラントベースをテーマにした座談会をお届けします。

高橋今日は楽しみにしていました。竹本油脂のごま油も、不二製油の濃久里夢(コクリーム)も長い間使っていまして、本日はプラントベースのお料理を3品ご用意しました。
竹本精進料理を紐解いても、ごまと大豆の役割は重要。ごま油メーカーとして、大豆に強い不二製油さんの商品ラインナップは興味深いです。
大森USS製法を確立したことで、これまでにない大豆素材が誕生しました。牛乳は遠心分離するとクリームと脱脂乳に分かれます。これと同じことを大豆でもできないかと苦心を続け、2012年にようやく豆乳クリームと低脂肪(脱脂)豆乳に分離することに成功しました。これら分離した2つの新たな素材から派生させて開発したのが、ソイレブール(豆乳クリームのバター)やマメマージュ(低脂肪豆乳のチーズ)です。
竹本ソイレブールは製菓・製パン業界で伸びていると聞きました。私もトーストにのせて食べましたが、違和感が全然なかった。おいしかったです。
大森マーガリンの代替ではなく、これまで動物性のバターしか使わなかった人が、ソイレブールにシフトする事例も多くみられます。完成度の高さを示す証かなと。
竹本ソイレブールやコクリーム、マメマージュといった不二製油さんの商品と、弊社のごま油を一緒に使うケースも多いようですね。ごま油はだいたい縁の下の力持ちというか、料理の黒子です。だから大豆のふくよかな持ち味をふくらませるんでしょう。
大森大豆特有の風味もマスキングしてくれます。植物性の油脂のなかで、ごま油は圧倒的に動物性に近いコク味がありますよね。

不二製油の「大豆」の進化は止まらない

大豆を原料に、同社の特許製法「USS製法」で豆乳クリームと低脂肪豆乳に分離し、これらをさまざまな商品に派生させた開発が進行中。2025年には新たなプラントベースチーズのラインナップが登場予定。

大豆の味わいをごまが支える

髙橋「豆乳香味胡麻豆腐」がまさにそんな一品です。本来はごまを煎って、すって、葛で炊いてと時間がかかりますが、コクリームと太白胡麻油、太香胡麻油でつくるネオごま豆腐です。コクリームと太香胡麻油の香りが一緒になると、上品なレバー刺しを食べているかのような香味に感じられると思います。
竹本いただきます。これはコクリームのおかげかな、クリーミーな余韻が長くて、とてもなめらか。確かに太香胡麻油の香りがいい役割をしていて、肉っぽいというのがわかります。
髙橋次の野菜真丈のお椀、そして当店の水菓子の定番、玉子アイスクリームも召しあがってください。野菜真丈はマメマージュmou(マメマージュムー)と太白胡麻油を使いました。もともとは水切りした豆腐で野菜をつないでいましたが、マメマージュムーのほうが味がしっかりしているし、まとまりがいいです。
大森野菜のダシが繊細な香りで、野菜真丈は意外にもコクがしっかりして食べごたえがあります。マメマージュムーによってこうなるのですね。
髙橋コクリームでつくる玉子アイスクリームもそうですが、既存の豆乳や豆腐といった大豆製品ではできなかったコクのある味わいを、コクリームやマメマージュは可能にしてくれます。ときには大豆だけでは料理の奥行きが足りない場合もありますが、ごま油を合わせて使うことによって味の完成度が高まります。ごまは、甘いの辛いのすっぱいの、どんな味にも合うのがすごいところ。大豆でつくるプラントベースの料理は、ごまがあってこそおいしくなると思います。

竹本油脂の「ごま油」は深化をつづける

生搾りの太白胡麻油と、ごまを焙煎して搾ったごま油の対極的なラインナップが特徴で、ゆえに料理のジャンルを問わず愛される。化学溶剤を用いず、自然な圧力だけでごまを搾る圧搾製法にこだわりをもつ。焙煎、濾過のノウハウを長期間にわたり蓄積している。

生搾りで無香、コクとうまみがあるごま油
太白胡麻油

ごまを焙煎してから搾った、香ばしいごま油のラインナップ。色合い、先香・後香の特徴、うまみ、香りの強さなどが多様で個性的
左から、太香胡麻油/圧搾純正胡麻油/圧搾純正胡麻油 濃口/胡麻油 一番搾り(※家庭用商品の一例)

プラントベースを軸に食の選択肢を広げる

竹本不二製油さんが2020年にスタートした「GOODNOON」というブランド戦略についておしえてもらえますか。
大森世界規模では2050年に人口100億の時代になるといわれています。これはもう肉や乳製品では地球がもたないだろうと、弊社ではあらためて大豆の価値を見直しました。プラントベースを推奨するわけではなく、食の選択肢を増やそうと。ですが5年ほど前に、社内でなぜプラントベースはなかなか日本で広まらないのかとアンケートをとったところ、満足度が低いと。
竹本やはり食の原点は、食欲を満たすおいしさですからね。
大森そうなんです。そこで社内に審議委員会を設けまして、おいしい、そしてサステナブルな評価を満たした製品をGOODNOONブランドとして認定することにしました。現在、ソイレブール、大豆ミート(プライムソイミート)などがあり、植物性ダシのMIRA-Dashi(ミラダシ)も生まれました。
竹本なるほど。大豆ミートのハンバーグに焙煎ごま油を入れたら、うまいだろうなぁ。圧搾純正胡麻油を数パーセント配合すると、かくし味として肉感が増すんじゃないかな。ミラダシでプラントベースのラーメンもぜひ一緒にやりたいですね。
大森今日をきっかけに、ごまと大豆で取り組めることがいろいろとありそうですね。
竹本食の世界の多様化の大きなストリームとして、プラントベースを進化させることが私たちのミッションであると強く認識しました。ありがとうございました。
(2024年8月 瓢亭にて)

番外編

不二製油の注目商品MOIL×太白胡麻油の挑戦

植物性油脂の技術で、藻から抽出したDHAをおいしく仕上げた製品「かけるDHA MOIL」が注目されています。今回の座談会では「MOILに太白胡麻油を入れてみたい」という竹本専務からのリクエストに応え、不二製油が試作品を用意。「DHAは酸化しやすいので、ゴマリグナン由来の抗酸化性に優れた太白胡麻油を合わせれば酸化しにくくなるだろう」(竹本専務)、「現状のオリーブオイル配合の製品よりも、太白胡麻油は料理を選ばずオールマイティ」(大森社長)など、意見が交わされました。はたして太白胡麻油入りのMOILは誕生するか!?

不二製油(株)
代表取締役社長
大森達司
https://www.fujioil.co.jp/
瓢亭
髙橋義弘

http://hyotei.co.jp/
竹本油脂(株)
取締役専務執行役員
竹本信二郎

瓢亭 髙橋義弘さんのプラントベースレシピ

豆乳香味胡麻豆腐

ねり胡麻と濃久里夢(コクリーム)のうまみが織りなす現代版レシピ

コクリームと野菜ダシ、太白胡麻油を葛粉で練りあげ、仕上がりが近くなったら太香胡麻油を加えて香りを残す。コクリームのまろやかなコクは一般の豆乳にはだせないもの。ねり胡麻を入れずにごま油でつくるので、舌触りがとてもなめらかで、この食感が翌日までもつ。ごまを煎る、するの工程がないので、調理時間も短縮できる。添えられた山椒と塩とともに口に入れると、「プラントベースとは思えぬ、一瞬レバー刺しのような肉っぽさが感じられるはず。大豆とごまの組み合わせの妙」(髙橋さん)

レシピはこちらから
http://gomashiki.gomaabura.jp/content/uploads/2024/09/gomadofu.pdf

野菜真丈 冬瓜 焼き舞茸 すじ青のり

精進料理なのに、コク味がある

季節の野菜を太白胡麻油で揚げたり、低温で焼いたりして味を濃縮し、マスカルポーネタイプのマメマージュmou(マメマージュムー)や葛粉とともに真丈に仕立てる。精進の野菜ダシは物足りなさを補うために塩分を強くしがちだが、あえて塩は控え、紅茶の茶葉をくぐらせて香りを重ねることにより、吸い地としての奥行きをだしている。別に添えられたすじ青のりを加えながら吸い地を飲むと、野菜ダシの隠れていた味が顔をだし、味変しながら楽しむことができる。

レシピはこちらから
http://gomashiki.gomaabura.jp/content/uploads/2024/09/shinjo.pdf

玉子アイスクリーム

瓢亭の定番デザートの一品

生クリームを使わずにつくる、まろやかで豊かな味わいの和食の氷菓。さっぱりしていながら、コクがあるのは、酢を加えて泡立てた軽いコクリームを入れているため。手前に添えたのはコクリームで甘く柔らかく煮た高野豆腐で、さながらフレンチトーストのような味わいと口当たり。仕上げには太白胡麻油で自家製している柚子のフレーバーオイルをかける。

レシピはこちらから
http://gomashiki.gomaabura.jp/content/uploads/2024/09/ice-cream.pdf

(2024年秋の号掲載)
※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。