特集愛知の底力

2025.10.14

徳川家康公に捧げる、愛知の発酵調味料「うまみ贔屓飯」7品を賛否両論の笠原将弘さんが紹介


江戸時代の人気料理をひとひねり

愛知県の尾張・三河地方で戦国・江戸時代に誕生し、今なお愛される発酵調味料の数々。米や豆、小麦が醸しだす発酵のうまみは料理の味わいを豊かにします。賛否両論の笠原将弘さんが昔日に想いをめぐらせ、家康公に捧げる秋のうまみあふれる料理をご紹介します。

里芋のピリ辛煮っころがし

実りの秋の芋名月、やみつく味わいの煮っころがしをうずたかく

RECIPE

里芋のピリ辛煮っころがし

材料/4、5人分

里芋…8個 煮干し…10本 A[水…300ml 砂糖、醤油…各大さじ2] 三州三河みりん…大さじ2 ごま油屋のラー油…小さじ1/2 長ネギ1/2本

  1. 里芋は大きければ切り、皮ごと水からゆでる。柔らかくなってきたら、水にとって手で皮をむく。
  2. 鍋に1、煮干し(頭と内臓ごと)、Aを入れて火にかけ、沸いたら弱火にして落としブタをして約10分煮る。
  3. 落としブタをはずして煮干しを取りだし、みりん、ごま油屋のラー油を加え、鍋をゆすりながら煮っころがす。
  4. 長ネギは斜め薄切りにし、水にさらしてほぐし、水を切る。
  5. 盛りつけて煮干しを添える。長ネギをあしらう。

鰹とナスのちらし寿司

粕酢の赤シャリは江戸の味

RECIPE

鰹とナスのちらし寿司

材料/4、5人分

ナス…1本 塩…少々 三ツ判山吹…小さじ1 タクアン…50g ミョウガ…2本 鰹(刺身用サク)…100g A[白醤油…大さじ2 三州三河みりん…大さじ1 太香胡麻油…小さじ1 カラシ…小さじ1/2] B[三ツ判山吹…大さじ3 白醤油…小さじ1] ごはん(炊きたて)…400g いり胡麻 白…適量

  1. ナスは1cm角に切り、塩もみして水気を絞る。三ツ判山吹で和える。
  2. タクアンはせん切り、ミョウガは小口切りにする。
  3. 鰹を一口大に切り、Aで和える。
  4. Bを合わせ、炊きたてのごはんに混ぜ合わせて赤シャリをつくる。タクアンを混ぜる。
  5. 皿に寿司飯を盛りつけ、鰹、ナスをのせ、ミョウガをちらし、いり胡麻 白をふる。

鯛とカブの煎り酒がけ

すっきり、繊細、うまみ濃し。復刻人気の「煎り酒」は醤油より古い塩味調味料

RECIPE

鯛とカブの煎り酒がけ

材料/4人分

煎り酒[酒…300ml 梅干し…3個 鰹節…5g 白醤油…大さじ2] カブ…2個 塩…少々 鯛(刺身用サク)…80g 太白胡麻油…大さじ1

  1. 鍋に煎り酒の材料を入れて火にかけ、沸いたら弱火にして10分煮る。火をとめて冷まし、漉す。
  2. カブは皮をむいて薄切りにする。茎は小口切りにする。それぞれ塩もみし、水気を絞る。
  3. 鯛を細く切り、1を適量、太白胡麻油と和える。
  4. 盛りつけ、1を適量かける。1の梅肉を少量ちらす。

◉煎り酒は、元治元年(1864)創業の奥三河の老舗酒蔵、関谷醸造の本醸造「玉桂」でつくりました。昔ながらの造り方のご当地名酒です。
◉塩のかわりに入れた白醤油はうまみが強いので、煎り酒づくりがはじめてでも味が決まります。

あさりの雷豆腐

熱々ごま油と豆腐が呼ぶ、雷鳴のごときバチバチッ音。甘辛のつゆだくで、おかずによし、ぶっかけ飯にもよし

RECIPE

あさりの雷豆腐

材料/4人分

アサリ…300g 木綿豆腐…1丁 長ネギ…1/2本 三つ葉…3本 A[醤油、三州三河みりん…各大さじ2 アサリの煮汁…大さじ2 酒…大さじ1 片栗粉…小さじ1] 太香胡麻油…大さじ1 黒コショウ…適量

  1. 鍋に砂抜きしたアサリとひたひたの水を入れて火にかけ、殻が開くまで中火で煮る。身をむき、煮汁は漉す。
  2. 豆腐はペーパータオルで包んで水気をふく。
  3. 長ネギは長さ1cmの小口切り、三つ葉は長さ3cmに切る。
  4. Aを混ぜ合わせる。
  5. フライパンに太香胡麻油を入れてよく熱し、豆腐を入れて木ベラでさっくりとくずしながら焼き目がつくまで中火で焼く。
  6. 長ネギ、1のアサリの身を加えてさっと炒め、4を加えて炒め合わせる。
  7. 盛りつけ、三つ葉と黒コショウをちらす。


利久玉子 キノコあんかけ

やさしい滋味あふれるごま風味の茶碗蒸し

RECIPE

利久玉子 キノコあんかけ

材料/4人分

A[純ねり胡麻 白ソフトパウチ、酒…各大さじ1 豆乳…大さじ4 三州三河みりん…大さじ1と1/2 白醤油…小さじ1] 卵…2個 シイタケ…2枚 シメジ、エノキ…各1/2パック B[ダシ…200ml 白醤油、三州三河みりん…各大さじ1と1/2] 水溶き片栗粉…大さじ1 ショウガすりおろし…15g

  1. Aをよく混ぜ合わせ、溶いた卵と混ぜる。ボウルに入れる。
  2. 1を約10分蒸す(もしくは鍋にお湯を沸かしてボウルを入れてフタをし、弱火で約10分湯煎蒸しする)。
  3. シイタケは軸を切り落として薄切りに、シメジ、エノキはほぐす。
  4. 小鍋にBと3のキノコを入れて火にかけ、沸いたら弱火にして煮る。キノコに火が通ったら、水溶き片栗粉を加えてとろみをつける。
  5. 2を大きなスプーンですくって盛りつけ、4をかけ、すりおろしたショウガを添える。

鴨味噌焼き卵かけごはん

TKGは精をつける勝ち飯。八丁味噌の甘辛ダレで進む、進む

RECIPE

鴨味噌焼き卵かけごはん

材料/2人分

長ネギ…1本 A[八丁味噌…大さじ2 酒、三州三河みりん…各大さじ4] 太香胡麻油…大さじ1 合鴨ムネ肉…1枚 ごはん…適量 卵…2個 粉山椒…適量

  1. 長ネギは白い部分は長さ4cmの棒状、青い部分は小口切りにする。
  2. Aを混ぜ合わせる。
  3. フライパンに太香胡麻油を入れて火にかけ、鴨肉を皮を下にして入れてしっかり焼き目がつくまで中火で焼く。裏返し、身側をさっと焼いて取りだす。薄切りにする。
  4. 3のフライパンを再度火にかけ、鴨肉と長ネギの白い部分をさっと炒め合わせる。余分な油をふきとり、2を加えて煮からめる。
  5. どんぶりにごはんを盛り、4を煮汁ごとのせる。卵を割り入れ、長ネギの青い部分をのせ、粉山椒をふる。

八丁味噌風味の麩の焼き リンゴみりん炊き

秋深し、八丁味噌とみりんで愉悦の甘味

RECIPE

八丁味噌風味の麩の焼き リンゴみりん炊き

材料/10枚分

リンゴみりん炊き[リンゴ…1個 三州三河みりん…100ml] 生地[薄力粉…100g 八丁味噌のパウダー…大さじ1 水…100ml] 太白胡麻油…大さじ2

  1. リンゴは皮をむいて1cm角に切る。
  2. 鍋に1とみりんを入れて中火にかけ、時々混ぜながら汁気がなくなるまで煮る。冷ます。
  3. 生地の材料をよく混ぜ合わせ、冷蔵庫で約30分やすませる。
  4. フライパンに太白胡麻油を薄く敷き、3を直径9cmくらいに薄く広げて両面を焼く。
  5. 4で2を巻く。

◉生地にはすぐに溶けて混ざりやすい、カクキューの「八丁味噌のパウダー」を使います。

愛知のうまみ発酵調味料

右から
カクキュー 八丁味噌
うまみが極まった、2年熟成のがっしりした豆味噌

角谷文治郎商店 三州三河みりん
米1升で1升瓶1本分の贅沢な仕込み。料理に自然な甘みやテリをだす

ミツカン 三ツ判山吹
江戸時代に誕生した、熟成酒粕から造るうまみの強い粕酢

ヤマシン醸造 白醤油
小麦由来の自然な甘みがあり、透明な琥珀色の醤油

「食」の大切さを知っていた家康公

愛知県の三河・岡崎に生まれ、疾風怒濤の戦国の世を駆け抜け、江戸幕府を開いた徳川家康公。生涯、養生を心掛け、当時の平均寿命の倍近く、75歳という長寿を全うしました。好んだと伝わる食事は、栄養価に優れる麦飯と地元の豆味噌。もっぱら粗食を良しとし、月に1、2度ほどは美味いものも楽しんだそうです。江戸に上った後も岡崎から豆味噌を運ばせ、常食としていたとか。

焼き味噌

家康公の好物「焼き味噌」をごま油で燦めく一品に

RECIPE

焼き味噌

材料/作りやすい量

八丁味噌…50g 三州三河みりん…大さじ2 太香胡麻油…大さじ1 いり胡麻 白…小さじ1 粉山椒…少々

  1. 材料すべてを混ぜ合わせる。
  2. 器に貼りつけるように盛りつけ(もしくは丸めて平らにする)、オーブントースターなどで表面にほどよい焼き色がつくまで焼く。

◉好みでショウガ、唐辛子、きざみネギなどを練り込んでもうまい。

「戦国の食術─勝つための食の極意」永山久夫(学研プラス) 
「日本長寿食事典」永山久夫(悠書館)
笠原さんはLOVEあいちサポーターズを務めるPR大使。チャンネル登録112万人のYouTube「【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道」が好評。

SPOT

賛否両論

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(2025年秋の号掲載)
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