特集アフリカのごま

2024.06.25

ごまのルーツは紀元前3000年のサバンナにあり。マルホン胡麻油のごまはアフリカからやってくる


マルホン胡麻油はごまをアフリカから輸入しています。タンザニアやナイジェリア、モザンビーク、ブルキナファソ、マラウイといったアフリカ各国から届くごまは、大半がごま油を搾るために使われます。日本から遠く1万キロメートル以上離れたアフリカで、ごまを育ててくれる数百万人の農家さんに感謝の気持ちを込め、現地に通うマルホン胡麻油スタッフのリアルな情報をお届けします。

アフリカから世界へ

ごまはさかのぼること5000年以上前、紀元前3000年にアフリカのサバンナに芽生えたといわれています。雨が少なく、植物にとって恵まれたとはいえない土地で生まれたごまは、とにかくパワフル。50%以上の油脂分を含み、栄養成分や抗酸化成分のリグナンも豊富。そのため食用に限らず、火を灯す油、香料などとして珍重され、「ごまは金のなる木」といわれました。古代ギリシャ時代には、医学の祖ヒポクラテスがごまは高栄養だと記しています。1粒ずつ硬い種皮に覆われているおかげで、長期間の保存がきき、遠方への輸送にも耐えられます。粒のまま食べられ、すりつぶせばペースト状に、搾れば油がとれます。煎ればとたんに香ばしい香りが立ち、食欲をそそります。長い長い歴史のなかで、文明の隆盛とともに大陸から大陸へ、そして海を渡り、ごまは世界中に広がり160ヵ国以上で食べられています。どの国のどんな食べ物とも合う懐の深さもごまの強みなのです。そんな力強いごまは、今なお発祥の地、広大なアフリカで脈々と栽培が続いています。

世界有数のごま生産国、タンザニアのとあるごま畑の風景。ちょうど開花期で一面の白やピンクの花が風に揺れる。5、6月くらいにごまが成熟して収穫期が訪れる。

アフリカ大陸は地球上の陸地の2割を占めるほど広大です。約55ヵ国に14億人が住み暮らしています。ごまは全土的に広く栽培されていますが、なかでも生産量が多いのはエチオピアやスーダン、ナイジェリア、タンザニアといった国々です。アフリカ全体で世界のごま貿易量の55%を占め、年間で約150万トンをアジア、トルコ、ヨーロッパなどに輸出しています。ごまの輸出国である南・東南アジア、南米の輸出量を合わせても80万トンなので、アフリカがどれだけ世界のごま消費を支えているかがわかります。

収穫期に訪れた、タンザニアのごま農家の一家。家族経営で小規模な農家が多い。

小規模農家がごま栽培を支える

ごまがアフリカで栽培されるのは、干ばつに強い植物なので、赤道付近の高温で乾燥した大地でも生育するからです。ごまの根は地上の茎の高さよりもさらに長く地下深くまで伸び、地下水を得るといいます。この力強さゆえ、生育初期に多少の降雨があれば、あとは水やりをしなくても立派に育つのです。
アフリカのごま農家はほとんどが小規模で家族で営み、1ヘクタール(100メートル四方大)ほどの畑で作付けしています。ごまは短期間で成長し、種をまいてから3、4ヵ月で収穫できます。連作障害が起きないようにするため、トウモロコシやヒマワリ、豆など他の作物とローテーションを組んで栽培している兼業農家がほとんどです。肥料や農薬は基本的には必要なく、土づくりから種まき、刈りとり、乾燥、脱穀まで、作業は機械化されずに手作業で行われています。



広大なアフリカでは、東西南北・中央アフリカの位置により、ごまの作付け状況も変わる。タンザニアとマラウイは、インド洋側の東アフリカに位置する。タンザニアにはセレンゲティ国立公園、マラウイには世界最大規模のマラウイ湖があり雄大な自然を抱えるが、ごま産地の多くは乾燥地帯にある。

Growing process of sesame

種まき
タンザニアやマラウイがある東アフリカでは、1月下旬から2月にかけて種をまく。播種から収穫まではおよそ90~120日。ごまは肥料がなくても育つ。

開花
ごまは成長が早く、1日に3㎝も伸びるほど。品種にもよるが、人の背丈より少し高くなる。釣鐘状の白やピンクの花が葉のつけ根に咲く。

種子が成熟
花が咲いてから1ヵ月ほどすると、サヤ状のさく果が成熟する。さく果の中にはごまが60粒ほど詰まっていて、1本の苗で1万粒以上が収穫できる。

刈りとり
東アフリカの収穫期は5~7月くらい。機械化はされず、鎌で手刈りする。

天日で干して乾燥
刈りとったら、天日で乾燥させ、その後に脱穀。乾燥工程は収穫したごまの品質を保持するために欠かせない大切な工程。

集荷
集荷のシステムは産地によってさまざまだが、農家が収穫したごまを市場に持ち込むことが多い。小石や枝などを除去し、シッパーを経て港から船積みされ輸出国へ。

マルホン胡麻油に欠かせないタンザニア

アフリカから輸入するごまのほとんどは、ごま油をつくるための搾油用。ごま油製造に適したごまは、油分が52%以上と高く、酸価値が低い(酸化していない)ものです。
竹本油脂が現在、力を入れて輸入しているのはタンザニアのごまです。一方、まだ収量はそれほどではありませんが、ごま栽培の新興国として注目しているのがマラウイです。この2ヵ国が位置する東アフリカは政情が比較的安定しているため、安心してごまを輸入することができます。
タンザニアはごまの生産量で世界のトップ10に入る国で、過去10年ほどで生産量は倍に伸びました。おもに南部の標高1000〜1500メートルの高地がごまの栽培地ですが、近年では北部や中央部など全土的にごま栽培が広がっています。国内のごま栽培にたずさわる農家は50万軒もあり、年間15万トンものごまが生産されています。

品種により差はあるが、ごまはだいたい人の背丈ほどに成長する。ごま粒はサヤ状のさく果の中にびっしり詰まっている。さく果が裂けるとごま粒が落下してしまうので、その前にタイミングをみはからって収穫。

注目株は新興のマラウイ

マラウイはアフリカ南東部の内陸に位置する、農業を主産業とする小さな国です。ごま栽培は10年ほど前から注目されはじめ、歴史はまだ浅く収量はわずかですが、主産地であるタンザニアやモザンビークに隣接し、良質なごまの新たな産地として期待されています。
竹本油脂では早くから産地の視察を重ね、現在はごま栽培が盛んな南部のチクワワ県でSDGs活動を続け、農家のごま栽培への意欲も高まっています。農家がごま栽培の知識や技術を得ることにより、生産性を上げ、貧困から脱却できるように活動を進めています。
タンザニア、マラウイに限らず、輸入国すべてにおいて、マルホン胡麻油は農家から工場までのトレーサビリティをめざしています。また、協働する商社のごま専任スタッフから常に現地の最新情報を得て、日本からも輸入担当者が現地視察を欠かしません。
マルホン胡麻油のごま油450gボトル1本を製造するために必要なごまは、約40万粒。高品質なごま油を搾るために、質のよいごまを安定して栽培できるように、現地の農家とともに歩みを進めています。

マラウイのチクワワ県の農村へ移動中の風景。農村には水道やガスは通らず、乾燥した土地で家畜と共生する。

参考文献/「ゴマの来た道」小林貞作(岩波新書) 「世界のゴマ状況と日本の輸入事情」2023年9月2日第38回日本ゴマ科学会大会(伊藤忠商事㈱食料カンパニー 食糧部門 油脂・カカオ部 カカオ・ゴマ課) ※取材協力/タンザニア連合共和国大使館 マラウイ共和国大使館

(2024年夏の号掲載)
 ※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。