特集アフリカのごま

2024.08.06

食のルーツ②加熱調理:夏こそ、土鍋料理!お肉も、夏野菜も、遠赤外線で素材の旨みを引き出す、夏の土鍋術と絶品レシピ


食のルーツをふり返ると、そこにはおいしい料理のヒントがたくさんあります。壮大なスケールの食の進化の過程から、「粉砕して食べる」ことと、「火の加熱調理」に注目してお届けします。
ヒトははるか昔から、遠赤外線の効果を享受して料理をしてきました。遠赤外線は素材をみずみずしく、柔らかく、おいしくする抜群の加熱法だといわれます。炭火焼きや薪火焼きが見直されているのも、あらためて炭や薪から発生する遠赤外線の力が見直されているからです。
家庭で気軽に遠赤外線を生かすなら、「土鍋」がおすすめ。土鍋を作陶し、その土鍋で素材が生き生きとした料理をつくる土楽窯の福森道歩さんが、土鍋使いのコツと遠赤外線効果を実感できるレシピをお教えします。

夏こそ土鍋の出番

調理法を選ばずどんな料理でも

土鍋で料理するとおいしい、とよくいわれます。それは土鍋を熱すると遠赤外線が発生して、食材に伝わるからです。遠赤外線調理の効果は、食材の内側でわかります。まるでじっくりと火を通したかのように、ふっくら、柔らかく、みずみずしくなり、素材の味もギュッと濃くなるんです。まるで「素材がグラマラスになる」みたい。だから高級な食材を使わなくても、土鍋だとおいしく化けます。土鍋レシピでごま油を使ったら、それはもう「ごまかす」ほどのおいしい料理になりますから(笑)。あえて土鍋を夏におすすめするのは、保温力が高くて余熱でも調理ができるので、加熱時間が短いからです。土鍋自体は熱くなっても、実は周囲はあまり暑くなりません。煮る、焼く、蒸す、炒める、オーブンやオーブントースターにも入れられる万能鍋で、そのままテーブルにもだせます。土鍋はすごく便利なんです。

料理に使った土楽窯の土鍋たち。大きさや形状はいろいろだが、中央の「黒小鍋」(直径18.5cm×高さ9.5cm)は2、3人分の料理に使いやすくておすすめ。

素材がおいしくグラマラスに

土鍋は鍋からもフタからも遠赤外線が発生するので、フタをして空焼きし、遠赤外線を土鍋の中に充満させるイメージで熱する。フタに触れて熱ければ(ヤケドしないように注意)、内部も熱くなっている証拠。素材を入れたら、遠赤外線で火入れするためにすぐにフタをして焼く。これが土鍋料理の基本。焦げつかないように、油をしっかり入れるのもポイント。

肉が土鍋に接している部分は「伝導熱」で火が伝わり、接していないところには土鍋やフタから発生する「遠赤外線」で火が入る。このダブルの火入れができるのが土鍋の魅力。土鍋は温まるまでは時間がかかるが、いったん温まってからは加熱が早いし冷めにくく、余熱でも十分に火が通る。

[焼く]牛ヒレステーキ

肉を土鍋で焼くの!?焼けます、ものすごくおいしく!焼き目はこんがりと、肉の内側は遠赤外線の効果で柔らかくふっくら。余熱で火を入れるので、焼き加減も思いのまま。

RECIPE

牛ヒレステーキ

材料/3人分

太白胡麻油…大さじ1 牛ヒレ肉(室温にもどす)…3枚(1枚100g程度) 塩、粗挽き黒コショウ…各適量

  1. 土鍋にフタをして弱めの中火にかけ、フタのすき間から煙がもれてくるまでしっかりと空焼きする。
  2. 太白胡麻油を入れ、牛肉を入れて塩、粗挽き黒コショウをふる。フタをして中火にして焼く。
  3. こんがり焼き目がついたら裏返して火をとめ、好みの加減で食べる。

[蒸す]鶏シューマイ

土鍋ごとテーブルにだして、フタを開けると湯気とともにいい香りが。シューマイの肉がふっくら、ふわんふわん。

RECIPE

鶏シューマイ

材料/10個分

絹ごし豆腐…1/4丁 セロリ…1/4本 鶏ひき肉…200g A[太白胡麻油…大さじ1 塩…小さじ1 酒…小さじ1 醤油…少々] シューマイの皮…10枚 キャベツ…5枚 ポン酢しょうゆ…適量

  1. 豆腐は水気を切る。セロリは粗みじん切りにする。
  2. ボウルに鶏ひき肉、1、Aを入れて手でよく混ぜ合わせる。10等分にしてシューマイの皮で包む。
  3. キャベツを太めのせん切りにする。
  4. 土鍋に3を入れ、水大さじ2(分量外)を回しかけ、2を並べてフタをする。弱めの中火にかけ、約10分蒸し焼きする。
  5. ポン酢しょうゆを添えて供する。

[炒める]塩豚とモヤシのポン酢風味

薄切りの豚肉を表面カリカリに焼いても、肉自体は遠赤外線でしっとりソフトになるから不思議。豚肉もモヤシもうまみが増します。

RECIPE

塩豚とモヤシのポン酢風味

材料/2、3人分

豚バラ肉(かたまり)…200g 塩…小さじ1 圧搾純正胡麻油 濃口…大さじ1 粗挽き黒コショウ…適量 モヤシ(ヒゲ根を取る)…1袋 ポン酢しょうゆ…大さじ2

  1. 保存袋に豚肉と塩を入れてなじませ、冷蔵庫に最低2時間、できれば一晩おく。
  2. 1を厚さ2mmくらいに切る。
  3. 土鍋にフタをして弱めの中火にかけてしっかりと空焼きし、圧搾純正胡麻油 濃口を入れ、2を入れて粗挽き黒コショウをふって炒める。
  4. 上にモヤシをのせ、ポン酢しょうゆを回し入れ、フタをしてモヤシに火を通す。火をとめて全体を混ぜ、好みで粗挽き黒コショウをふる。

[煮る]ピェンロー風鍋

夏に食べたい鍋物、それはごま油をきかせたピェンロー鍋。レタスやレモンで夏向きにアレンジ。

RECIPE

ピェンロー風鍋

材料/3人分

干しシイタケ…6枚 春雨…150g レタス…1/2個 豚バラ肉(薄切り)…150g 太香胡麻油…大さじ3 酒…大さじ3 鶏ガラスープ…3カップ しょっつる…大さじ1/2(またはナンプラー) レモン薄切り…3枚 塩…適量

  1. 干しシイタケは水でもどして太めのせん切りにする。もどし汁も1/4カップ使う。
  2. 春雨は熱湯に浸して硬めにもどし、半分の長さに切る。
  3. レタスはざく切りにする。
  4. 豚肉は一口大に切る。
  5. 土鍋に太香胡麻油大さじ1を入れて弱めの中火にかけて温め、4を炒め、酒、1、鶏ガラスープ、しょっつるを加える。
  6. 煮立ったら2、3、レモン、太香胡麻油大さじ2を入れ、ふたたび煮立ったら火をとめる。塩を好みでふって食べる。

[焼く]カツオの黒酢ペッパーソテー

これだけ厚く切ったカツオも、土鍋の遠赤外線はみずみずしくふっくらと焼きあげます。パサつく心配がないのがうれしい。

RECIPE

カツオの黒酢ペッパーソテー

材料/3人分

カツオ…サク1/2本 塩…小さじ1と1/2 粗挽き黒コショウ…適量 ニンニク…2かけ 太白胡麻油…大さじ1 A[黒酢…大さじ2 醤油…大さじ1]

  1. カツオは3等分に切り、塩、粗挽き黒コショウをふる。ニンニクはスライスする。
  2. 土鍋に太白胡麻油とニンニクを入れて弱めの中火にかけ、ニンニクが色づいて香りがでたら取りだす。
  3. 2にカツオを皮目を下にして入れ、フタをして焼く。焼き色がついたら裏返して焼く。
  4. Aを合わせて加え、カツオにからめて火をとめる。ニンニクを添える。

◉黒酢は濃い色のものがおすすめ。バルサミコ酢でもOK。

[蒸し焼き]土鍋で楽しむ夏野菜

トウモロコシ

実の皮がピンと張り、中は一粒ずつふっくら。ごま油で焼いて、追いバターが最高に贅沢。

RECIPE

トウモロコシ

材料/2人分

トウモロコシ … 1/2本 圧搾純正胡麻油 濃口…大さじ1 醤油…適量 バター…適量

  1. トウモロコシは縦半分に切る。
  2. 土鍋に圧搾純正胡麻油 濃口を入れ、1を実側を下にして入れる。フタをして弱めの中火にかけ、蒸し焼きする。
  3. 実が焼けてチリチリと音がしてきたら、裏返してさらに焼く。
  4. 火をとめ、醤油をふり、バターをのせる。

ホットカプレーゼ

トマトがふっくらジューシー。

RECIPE

ホットカプレーゼ

材料/2人分

フルーツトマト…2個 太白胡麻油…大さじ1 モッツァレラチーズ…2切れ(厚さ1cm) 塩、粗挽き黒コショウ…各適量

  1. トマトは上下を少し切り落とす。
  2. 土鍋に太白胡麻油を入れ、1を入れる。モッツァレラをのせ、塩をふる。
  3. フタをして弱めの中火にかけて蒸し焼きする。火をとめ、粗挽き黒コショウをふる。

枝豆

ごま油の香りの蒸し枝豆は、ビールが進む!遠赤外線で味が凝縮して大豆の味わいが濃い。

RECIPE

枝豆

材料/2、3人分

枝豆…2つかみほど 圧搾純正胡麻油 濃口かごま油屋のラー油…大さじ1 塩…適量

  1. 枝豆は洗った水をあまり切らずに土鍋に入れ、水大さじ1(分量外)を回しかける。
  2. フタをして弱めの中火にかけて蒸し焼きし、5分ほどたったら全体を混ぜて火をとめる。余熱で好みの硬さまで火を通し、圧搾純正胡麻油濃口かごま油屋のラー油をかけ、塩をふる。

[煎る]遠赤外線の焙煎は香ばしい

市販のいり胡麻はそのままでもおいしいですが、土鍋で煎るひと手間を加えると、さらに香り高くなります。土鍋にごまを入れて弱めの中火にかけ、土鍋が熱くなったら、あとはごく弱火でゆっくりと、混ぜながら煎ります。ごまの表面の色が少し濃くなる頃には、いい香りが立ってくるので火をとめます。土鍋から伝わる遠赤外線で、ごまがふっくら煎りあがります。

ウェブにも福森さんから届いたレシピが続きます!
アジたたきのパン粉焼き・土鍋ビビンバ・ごま担々スープ
https://gomashiki.gomaabura.jp/content/uploads/2024/06/gomashiki152_web-fukumori_240605.pdf

福森道歩
江戸時代から続く三重・伊賀焼の窯元「土楽」の8代目。辻調理師専門学校や禅寺などで料理修業を積んだ、料理上手な陶芸家。著書に「小鍋でつまみ」(東京書籍)など。
https://doraku-gama.com

(2024年夏の号掲載)
※掲載情報は取材時点のものとなり、現在と異なる場合がございます。